“お金目当て”がバレないために必死で、何も見えてなかった
親とは死別していて、そこそこの年収がある男性と、親と同居前提のシングルマザーとの結婚。お金目当てでの再婚という思惑を隠すため、可能な限りお金で頼ることはしなかった。凪咲さんは結婚する前から、昼間は子どもを母親に頼んで、正社員で働き出す。結婚後は育児に家事、そして仕事と、必死に毎日を過ごしていたそう。
「お金目当てという後ろめたさがあるからこそ、周囲や夫にその思惑をバレたくなくて、隠すために必死で毎日過ごしていました。夫婦の財布も別々にして、食費や光熱費などが引き落とされる口座にはお互い同額を入れていました。夫は私の実家で暮らして家賃がかからないからその他は自分が払うと言ってくれたのですが、私のほうから遠慮しました」
そんな結婚生活で体を酷使してしまい、凪咲さんは倒れてしまう。そのときに夫と娘から仕事をやめるようにお願いされたという。
「職場で腹痛に襲われてトイレに行ったら、その後に冷や汗や手足のしびれが起こって、トイレから立ち上がれなくなってしまったんです。心配した同僚がそんな私を見つけてくれて、そのまま病院に連れて行ってもらいました。
病院に迎えに来てくれたのが、夫と娘だったんです。娘は結婚前から夫に懐いていたのですが、2人で私に仕事をやめるように説得してくる姿を見て、こんなに2人は仲を深めていたんだなって。そして、そんな2人の中に入れていない自分にも気づきました。今まで3人で過ごす時間はあったんですけど、子どもにとっては十分じゃなくて、寂しい思いをさせていたんです」
凪咲さんは今まで子どものお金などは自分の収入から用意していたこともあり、子育てで困ったことがあっても夫に相談することはなかった。それが仕事をやめたことで、経済的なことだけでなく、精神的にも頼ることができるようになったという。
「夫と子どもを一緒に育てているという感覚がなかったんです。再婚は、いざというときの保険みたいなものだと認識していたんだと思います。でも、夫は結婚すると決めたときから私たちにずっと歩み寄ってくれていたのかなって。あんなに懐いている娘を見て、やっと気づくことができました」
子連れ再婚でうまくいくためには、子どもと新しい夫との相性が重要となる。凪咲さんはパートナーを選ぶ際に自分の気持ちを二の次にした。それが正しいとは言えないが、初婚のときとは違う視点があったからこそ、今の幸せがあるのかもしれない。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。
