
人の生き方とは様々です。何となく観ていたテレビ番組や新聞の記事などで、とある人物の人生を知り、心打たれることがあります。人様の生き方から学ぶことも多いものです。
同じように、先人たちが残した名言や金言の中に、人生の道しるべとなるようなヒントを見つけることができるかもしれません。今回の座右の銘にしたい言葉は「油断大敵(ゆだんたいてき)」 です。
目次
「油断大敵」の意味
「油断大敵」の由来
「油断大敵」を座右の銘としてスピーチするなら
最後に
「油断大敵」の意味
「油断大敵」について、『⼩学館デジタル⼤辞泉』では、「油断は失敗のもとであるから、大敵である。油断して失敗を招くのを戒めた言葉」とあります。つまり「小さな気の緩みが取り返しのつかない大きな問題を引き起こす危険がある」という戒めを含んだ言葉です。この言葉の魅力は、たった4文字で的確に「注意深さ」の大切さを伝えている点にあります。
「油断大敵」の由来
「油断大敵」の由来には、いくつかの説があります。ここでは、その中でも有力とされる2つの説を紹介します。
比叡山延暦寺の「不滅の法灯」
日本の天台宗の総本山である比叡山延暦寺には、国宝に指定されている「根本中堂」という建物があります。この根本中堂の内陣には、1200年以上もの長い歴史を持つ「不滅の法灯(ほうとう)」と呼ばれる灯火が灯されています。
この「不滅の法灯」は、天台宗の開祖である最澄が本尊の薬師如来を祀った際に灯した火だと伝えられています。それ以来、僧侶たちが毎日菜種油を注ぎ、絶やすことなく守り続けて今日に至っています。灯火を維持するためには、油を絶やさないことが最も重要です。もし油が足りなくなれば、灯火は消えてしまいます。
ここから、「油断(油を断つこと)は大敵(火を消す危険を招く)」という考え方が広まり、現代の「油断大敵」に繋がったという説があります。
インドの王様の逸話
あるインドの王様が、家来たちの忠誠心や注意力を試すために、特別な試験を行ないました。王は家来に、表面張力ギリギリまで油が満たされた鉢を両手に持たせ、人通りの多い道路を歩かせました。さらに、「もし油を一滴でもこぼせば命を奪う」と言います。これに対して家来は一滴も油をこぼさないよう、細心の注意を払って歩き続けました。
その結果、見事失敗することなくミッションを果たし、命を救われただけでなく、王からの信頼を得て重要な役職に任命されたといいます。
どちらの説にも共通するのは、「油断」が重大な結果につながる可能性があるという点です。法灯の油断は、信仰の灯火を消してしまうことになりますし、家来の油断は死を意味していました。現代社会においても、仕事や人間関係、健康管理など、あらゆる場面で「油断大敵」の精神が重要です。
「油断大敵」を座右の銘としてスピーチするなら
「油断大敵」を座右の銘としてスピーチする際は、言葉の意味を簡潔に説明し、自分がどのようにこの言葉を活かしているかを述べることで、聴衆の共感を得られます。以下に、「油断大敵」を取り入れたスピーチの例をあげます。

入念な準備と確認の必要性を語るスピーチ例
私の座右の銘は「油断大敵」です。若い頃、仕事で大きなミスをした経験があります。それは、自分の力を過信し、綿密な準備を怠った結果、重要な商談で失注してしまいました。以来、この言葉を胸に、どんな小さな仕事でも、入念な準備と確認を徹底しています。また、最近は健康面でも「油断大敵」を意識し、定期的な検診を欠かしません。
どんなに順調なときでも、慢心することなく努力を続けることが重要です。今後も、この座右の銘を胸に刻み、常に気を引き締め、目標達成に向けて努力を継続していきたいと思っています。
最後に
「油断大敵」という座右の銘は、シンプルでありながら非常に奥深い言葉です。特にシニア世代にとって、「油断大敵」は過去の経験を振り返り、未来への注意を促すエールのような存在です。日々の生活の中でこの言葉を意識することで、思わぬ失敗やトラブルを防ぎ、より充実した人生を送ることができるでしょう。
●執筆/武田さゆり

国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com
