人の生き方とは様々です。何となく観ていたテレビ番組や新聞の記事などで、とある人物の人生を知り、心打たれることがあります。人様の生き方から学ぶことも多い。また、己の生き方と比べ、恥いることもしばしばです。
どこで、人生の違いが生じたのか? 運なのか、チャンスだったのか……。おそらくは、志と運を呼び寄せる努力、そしてチャンスを物にする能力の違いではないでしょうか?
先人たちが残した名言や金言の中に、その答えを見つけることができるかも知れません。第30回の座右の銘にしたい言葉は「能(のう)ある鷹(たか)は爪(つめ)を隠(かく)す」 です。
目次
「能ある鷹は爪を隠す」の意味
「能ある鷹は爪を隠す」の由来
「能ある鷹は爪を隠す」を座右の銘としてスピーチするなら
まとめ
「能ある鷹は爪を隠す」の意味
「能ある鷹は爪を隠す」について、『⼩学館デジタル⼤辞泉』では、「実力のある者ほど、それを表面に現さないということのたとえ」とあります。シニア世代の方々にとって、この言葉は生涯を通じて大切にしたい座右の銘となり得ます。なぜなら、豊かな人生経験と知恵を持つ一方で、謙虚さを忘れないことが、円滑な人間関係や信頼関係の構築に大きく寄与するからです。
裏を返すと、たいした力もない者にかぎって、いつも偉そうなことを言って威張ったり、弱い者には上から目線で力を誇示したりする、ということになります。実力のある者が日常生活では謙虚にふるまうことを称賛する一方で、空いばりする者を暗に批判する表現ともいえるでしょう。
「能ある鷹は爪を隠す」の由来
この言葉は、鷹という猛禽類が狩りを行なう際の行動に関連しています。鷹は非常に鋭い爪を持っており、それを使って獲物を捕まえるのが得意です。しかし、鷹は普段からその爪を見せびらかすことはせず、むしろ隠しておいて獲物に気づかれないようにします。
そして、いざという時に素早くその爪を繰り出して獲物を仕留めるのです。このような習性から、賢い鷹は常に爪を隠し持ちながらも、決してその力を無駄に使わず、最適な瞬間にだけ力を発揮することがわかります。
比喩に鷹が出てくるのは、古くから公家や武家の間で好まれてきた鷹狩りにあります。鷹は並外れた狩猟能力を発揮するだけでなく、「鷹は飢えても穂を摘まず」といわれるように、プライドの高い威厳のある猛禽とされてきました。また、「鳶(とび)が鷹を産む」といえば、平凡な親に優秀な子どもが生まれるたとえとして使われますね。
「能ある鷹は爪を隠す」を座右の銘としてスピーチするなら
スピーチでは、実力を誇示せず静かに努力し、いざという時に力を発揮することの大切さを強調し、個人の謙虚さと内面的な強さを養う重要性を話すと聴衆を惹きつけることができるでしょう。以下に「能ある鷹は爪を隠す」を取り入れたスピーチ例をあげます。
適切な時に力を発揮することの重要性を語るスピーチ例
皆さん、「能ある鷹は爪を隠す」という言葉をご存じでしょうか? このことわざは、実力を持つ人がそれをひけらかさず、必要な時にだけ発揮するという意味を持っています。鷹は鋭い爪を持っていますが、獲物を捕らえるまでそれを見せることなく、最適な瞬間に爪を繰り出して仕留めます。
この鷹の行動に例えられるように、私たち人間もまた、無闇に自分の力を誇示するのではなく、静かに機会を待ち、適切な時に力を発揮することが重要だとされています。
皆さんは、これまでの人生で数々の経験を積み、知恵やスキルを蓄えてきました。しかし、これらの経験や知識は必ずしも常に表に出す必要はありません。むしろ、静かにその力を内に秘めておくことで、周囲からの信頼を得ることができるのです。人間関係や社会での立ち位置においても、謙虚さは大きな武器になります。
この言葉を座右の銘とすることで、人生の様々な場面で、自己の価値を適切に発揮できるようになるでしょう。見栄を張らず、他人と比較せず、必要な時にだけ力を見せる。これが、私たちがこれからも豊かな人生を送るための知恵です。ですから、「能ある鷹は爪を隠す」という言葉を心に刻み、今後の生き方の指針としていただければ幸いです。
まとめ
人生の指針として「能ある鷹は爪を隠す」を胸に刻み、謙虚さを持ちながらも必要な場面で自分の能力を発揮することで、家庭、職場、地域社会においても大きな影響を与えることができるでしょう。過度な自己アピールではなく、静かに内なる力を発揮することが、最も大きな力を持つのです。
●執筆/武田さゆり
国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com