些細な生活音にもイライラした

沙也加さんはすぐに引っ越しをして、地元から通勤圏内にある企業と契約を結び、フリーとして仕事をしていくことに。仕事をしながらも、母親と一緒に過ごす時間を積極的に作っていた。それで最初はうまくいっていた。

「実家に戻ることを決めてからはもう怒涛の日々でした。引っ越し、求職活動、実家の手すりの取り付け工事や掃除などなど。その間は母親も私が戻ってくることが嬉しかったのか、元気になっていったんです。昔のように、私の家事のやり方について意見をしてくるようになりました。骨折して気を落としてからそんなことはなくなっていたから、この言い合いができることが私は嬉しかったんです」

しかし、徐々にお互いの存在にストレスを感じるようになっていったという。

「15年以上離れて暮らすと、生活のペースがまったく嚙み合わなくなっていました。お風呂のタイミングや、1人だったらまったくない生活音で起こされたりすることに、お互いがイライラしていきました。私には帰ってきてやったという恩着せがましい思いがあり、母親にはこの家でずっと生活していた自分がなぜ娘に合わせないといけないという思いがあって、お互いに優しくできなくなっていった。

最後は酷いものでしたよ。無言の食卓になり、母親と一緒の時間を過ごすために帰ってきたはずなのに、仕事と理由をつけて深夜に帰るようにしていましたから」

沙也加さんが再び実家で一緒に暮らした期間は2年ほど。その後は実家から少し離れた場所で1人暮らしをしている。沙也加さんの家は実家より仕事先から離れた場所にある。その理由は仕事帰りに様子を見に行けるからだという。

「生活の一部として親と関われたらいいかなと思って。親のために無理をすると良くないことが2年間で学んだことです」

実の親でも再同居に苦痛を感じる人も多い。どちらか一方がストレスを感じる関係であれば、別居を選択したほうがいい。一度離れて暮らした者同士はたとえ親子であっても、他人ぐらいの距離感で付き合うほうが幸せだろう。

取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。

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