20~30代前半は結婚よりも仕事だった
沙也加さんは今まで一度も結婚していない。20代、30代前半は仕事ばかりをしていたという。結婚、妊娠や出産は仕事の妨げになると考え、選択できなかったそう。
「広告代理店で営業の仕事をしていて、大きな案件も担当していたので、それを妬む人もたくさんいました。それに私が若い頃はまだまだ男性がメインになる仕事が多く、数少ない女性が結婚や妊娠を機に大きな案件から外されるところを見てきました。だから、自分も結婚や妊娠をすると仕事がなくなってしまうという恐怖心があったんです。20代のときに長く付き合った男性はいましたが、結婚についての話し合いについて避け続けていたら、フラれました」
そんな仕事ばかりの娘に対して、両親は結婚しろと一度も言わなかった。親族から結婚しないのかと聞かれたときもかばってくれたという。
「結婚の話題を付き合った男性との間でも避けていたので、親に彼氏を紹介したことは一度もありませんでした。両親に付き合っている男性の話をしたことも一度もありません。親から聞かれなかったから、言うタイミングもなくて。20代後半になると友人たちから『親から結婚しろと言われ続けて嫌になる』とよく聞いていたのですが、私の親は何も言ってきませんでした。親族で集まったときには叔父や叔母から結婚について聞かれることがあったのですが、『この子は仕事を頑張っているから』と両親は言ってくれていました」
30代後半からは営業から人材教育部門に異動となり、仕事に以前のような情熱は感じられなくなった。そんなときに母親が転倒して、足を骨折してしまった。親のこれからに対しての心配や不安な思いから、沙也加さんは仕事を辞めて、一時的に実家に戻ることを決意した。
「私はまだまだプレーヤーとして働きたかったのに、それができなくなって、自分のキャリアに悩んでいる時期でした。だから親のことを聞いて、仕事を辞めることに迷いはありませんでした」
一時帰省から再同居を決意するまでは一瞬だったが……。【~その2~に続きます】
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。
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