一人っ子だから、両親のことは人一倍気にしていた
千鶴さんは26歳のときに転職で上京。都内勤務の男性と29歳のときに結婚して、そのまま東京で暮らしていた。帰省は年に3度ほど。大型連休は夫婦揃っての帰省になるため、1年に1度は1人で帰省するようにして、家族3人水入らずで過ごす時間を作っていたという。
「夫とは東京で出会ったのですが同じ地域の出身で、帰省はそれぞれの家に1、2泊ずつするようにしていました。今でこそそれぞれの実家に別々に帰省するような考えもあるようですが、今から20年ほど前は一緒に帰省することが当たり前でしたからね。義実家に泊まることもそうですが、私の実家に夫が来るとどうしても両親と本音でゆっくりするという時間はなくなります。だから3連休などのときに1人で帰省するタイミングを作っていました」
家族3人で過ごす時間を作っていた理由は、「一人っ子だから」。
「きょうだいがいる友人は、きょうだいの1人は親の近くで暮らしていました。私の友人には1人だけ同じ一人っ子がいたのですが、その子は結婚せずに親と同居を続けていました。みんな、完全に親元から離れてはなかったんです。でも、私は一人っ子なのに親元を遠く離れてしまっていたので、夫と2人の帰省だけでなく、もっと親の元に帰らなければという思いがありました」
両親は2人でも仲良く生活を続けているように、千鶴さんには見えたという。
「両親は2人で仕事終わりに待ち合わせをして外食をしたり、旅行に行ったり、楽しそうに夫婦だけの生活を楽しんでいるように見えました。
私や、私たち夫婦が実家に滞在中は母親が食事を作ってくれていたので気づかなかったのですが、もう母親は父親と2人になってから料理を作ってなかったのです」
食器棚に並べられた食器には埃がたまっていた。【~その2~に続きます】
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。