義親の前では「辛い」も言えない
夫婦の仲は悪化したが、離婚することは選択肢になかったと達二さんはいう。しかし、離婚に至っている。離婚の決定打となったのは、妻が流産してしまったことだった。
「妻が流産してしまった。そのことで心身の状態が不安定になり、妻と妻の母の仲がこじれてしまったんです。私には仕事があってずっと一緒にはいられなかったので、私はそんな妻を1人にさせておけないと思って、自分の母親を呼びました。母は妻の流産を聞いたときに、孫のことよりも妻の体のことを気にしてくれて、そのことを妻はとてもありがたかったと振り返っていたんです。それから頻繁に母と妻は連絡を取り合うようになっていたので、来てもらっても問題ないと思ったんです。実際に母が来てから妻は元気になっていきました。
でも、その後に『(義母の前で)気丈に振舞うことのほうが疲れた。辛いという本音は言えなかった。家族だと思えなかった』と言われました」
離婚は妻から言い出した。離婚理由については、妻にお願いして、達二さんの両親には性格の不一致としてもらった。その嘘は今もバレていないという。
「離婚は妻から言い出しましたが、親や自分の家族のことを否定され続けて、流産後のあの発言をされたときにもうこの生活を続けていくことは無理だと思っていました。本当の離婚理由は今後も絶対に両親やきょうだいに言うつもりはありません。私の家族は友好的だったので傷つくと思うからです。
結婚相手は自分とだけ相性がよくても成立しない、ということが今回でよくわかりました」
結婚したのだから「夫婦ファースト」の考えを貫くことが、夫婦の関係がうまくいく大前提だとされている。中立の立場を貫くこともダメ夫とされてしまうのだ。しかし自分の親のことを悪く言われて、それにストレスを感じてしまうなら、自分の気持ちを優先し、離婚を選択することは悪ではないはずだ。結婚も離婚も双方の意思で成立するものなのだから。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。