母親の急逝。一人になった父親が見せた気丈な態度
結婚して10年が経ち、夫と2人の子供と4人家族として過ごす中で、徐々に両親との連絡も年数回に減っていったそう。その10年の間に2人の姉も嫁ぎ、夫婦水入らずで過ごしていた両親に衝撃の事件が起こります。
「母親が急に倒れて、そのまま息を引き取りました。体調が悪いなんてこともなく、健康そのものだったのに。訃報は結婚後も京都で暮らしていた真ん中の姉からの連絡でした。私は子供たちを義母に預けて一目散に京都に戻ったんです。そこには横たわる母親がいて、本当なんだなって、その姿を目にするまで、もしかしたらという思いがあったのでショックでしたね。私たち娘は泣き崩れるしかできなくて、父親はただただ静かに母親の側に寄り添っている感じでした」
葬儀を終え、久しぶりに家族4人で実家に集合して一緒に食事をしたとき、父親は留美さんたちの前では一度も泣かなかったと言います。
「落ち込んでいたとは思います。母親は娘たち全員が嫁いだので、それをきっかけに夫婦旅行の計画をたくさん練っていたみたいで、父親もそれを楽しみにしていましたから。
急に一人暮らしになった父親のことを放っておけないと同じ京都に住む真ん中の姉が一緒に住もうと提案したことがあったんです。私は徳島、一番上の姉は広島に嫁いでいたのでそんなことを言いだすことはできませんでした。でも、父親はその提案を断ってきました。『それぞれある家族のことを一番に考えてほしい。父さんは幸せだったから』と言いました」
父親は現在一人暮らしを満喫しているようで、1年ほど前に小型犬を購入したそう。お盆や正月も「娘たちは嫁ぎ先で過ごすべき」と帰省する必要はないと伝えられていると言います。「そういう部分は本当に頑固なんですよね。今は3人で結託して、姉の家に行くついでということで実家に寄るようにしています。娘包囲網はこの先もずっと続けますよ。だって父とも家族ですから」と留美さんは笑顔で語ります。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。