感じのいい人に憧れる人は多いのではないでしょうか? 話しやすい、仕事がスムーズに運ぶ、いつも和やかな空気感を持つなど、一緒にいて心地が良く、誰からも信頼されている、そんな感じのいい人なら人間関係に悩むことも少なそうです。
では感じのいい人になるには、どうすれば良いのしょうか? 千利休を祖とする茶の湯の家に生まれ、仏寺で修行した茶人の千 宗屋さんによると、いつも感じのいい人が実践しているのはたった6つの習慣。
「思いやる」「敬う」「感謝する」「きれい好きになる」「ご縁を大切にする」「我が身に置き換える」。
この6つの思考習慣を身につけることで物事がうまく動き出し、人間関係も良くなると言います。
そこで今回は、千さんの最新著書『いつも感じのいい人のたった6つの習慣』(小学館)から、習慣を変える方法をご紹介。まずは自分の周囲から始める、心の持ち方や見方、考え方を少し変えるなど、できるところから始めてみることで、自分だけでなく周りの人が変わってくるかもしれません。
文/千 宗屋
身近なところから始める
人間関係でふとつまずいたり、悩んだりした時、今までの自分の生き方や人との接し方が間違っていたのではないかと迷った時には、この6つの思考習慣を思い出してください。
いつの間にか自分が世の中の風潮に流され、効率ばかりを考える行動や習慣になっていたことに気がつくはずです。
とはいえ、実際の生活の中でいつもこうした考え方ができているかとなると、本当はとてもむずかしいことかもしれません。
特に「相手の気持ちを慮る」は、自分に余裕のある時や仲の良い人に対してなら実行できても、嫌いな人や自分を攻撃してくる相手に対してはとうていそのような心持ちにはなれないことでしょう。
最初はそれでいいと思います。
まずは、自分の好きな人や家族、仲のよい友だちに対して、相手の気持ちを慮り、より気持ちよく過ごせるよう、思いやりをもって接してみてはどうでしょう。いつのまにか自分を優先してふるまっていたなら、その態度をあらため、相手を優先する行動を取れば、きっとその変化に気づいてくれるはず。あるいは、いつも自分が損をしているように感じてしまう相手にも、むしろ「どうぞ」の譲る気持ちで接してみれば気持ちに余裕が生まれ、おだやかにつきあうことができます。
そうして相手の反応が変わってきたらこっちのもの。人間関係がうまくまわり出した証です。次はもう少し広い範囲に広げてみてはいかがでしょう。
まずは自分を好きになる
6つの思考習慣の最後に、「わが身に置きかえる」を挙げました。自分本位と他人本位の両方を同時に習慣化することの大切さを説いたこの考え方も、実は茶の湯におけるもてなしの根本をなすものです。
日常生活に置きかえると、誰かをもてなすというよりもむしろ、誰かと今よりももっと分かり合いたい、深く理解し合いたい、絆を深めたいという時にこそ役立つ考え方ではないでしょうか。
私たちはしばしば、相手に合わせすぎたり、相手の気持ちがわからずに苦しんだり、または自分を押し殺しすぎて疲れてしまいがちです。
そんな時こそ思い出してほしいのが、「わが身に置きかえる」なのです。相手とはしょせん他人。どんなふうに感じているのかはわからないのに、そこにばかりこだわっていてはよい人間関係は築けません。
まずは自分を好きになること。
そのためには、自分の考え方やふるまい方を俯瞰で眺め、自分が相手に対してできることを見極め、誠意を持って尽くしましょう。
自分が変われば相手も変わる
まず自分が変われば、相手も変わり、そうすることで互いへの敬意や理解も深まります。
仕事の上でもプライベートでも、自分と周囲の関係を変えたいと思った時、まず相手を変えようとするのは無駄な努力です。かりに相手が一方的に間違った考え方や行動をしていると感じている時でも、それを説得し、行動をあらためさせる試みは徒労に終わることがほとんどです。
でも、自分のほうが、相手への接し方や態度、話し方を変えれば、自分の中に余裕が生まれます。そしてその余裕は相手にも伝わり、結果的には相手も変えることになるのです。
環境を変えたければまず自分が変わること。そうすることで未来も人生もまた変えられるのです。
千 宗屋(せん・そうおく)
茶人。千利休に始まる三千家のひとつ、武者小路千家家元後嗣。1975年、京都市生まれ。2003年、武者小路千家15代次期家元として後嗣号「宗屋」を襲名し、同年大徳寺にて得度。2008年、文化庁文化交流使として一年間ニューヨークに滞在。2013年、京都府文化賞奨励賞受賞、2014年から京都国際観光大使。2015年、京都市芸術新人賞受賞。日本文化への深い知識と類い希な感性が国内外で評価される、茶の湯界の若手リーダー。今秋、「人づきあい」と「ふるまい方」を説いた書籍『いつも感じのいい人のたった6つの習慣』を上梓。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授、明治学院大学非常勤講師(日本美術史)。一児の父。Instagram @sooku_sen