正社員になることが親孝行
学資保険のおかげで由紀さんは大学に進学することができた。姉が高校卒業と同時に就職していたこともあり、親の離婚後もお金に苦労することはなかったという。
「姉は就職したので、姉の分の学資保険を、日々の生活資金や私の教育費に充てられていたからです。姉は働き出して家にお金を入れてくれるようになっていたこともあって、お金での苦労はありませんでした」
姉は母親から大学進学を求められていたが、それを自ら拒否。勉強が嫌いではなかった由紀さんは母親の期待を一身に背負うことになる。
「姉は勉強することが嫌いだと母親にはっきりと意思表示をしていました。私は友だちも高校を卒業してすぐに働く子が少なかったから、働きたくなかったので大学進学を選択しました。幸いにも勉強はできたので、母親からの期待は負担ではありませんでした。姉が反発した分、私が母親の機嫌を取らなくてはという使命感もあったと思います」
由紀さんは就職活動がうまくいかず、希望した企業からはことごとく内定がもらえなかった。それでも母親の期待を背負った由紀さんにフリーターという選択はなかったという。
「就職氷河期ではないものの、リーマンショックもあって景気が悪い時期で、周囲にはフリーターになる人や、アルバイト先にそのまま就職する人もいました。でも、私にその選択はありませんでした。親の期待に応える意味でちゃんとしたところに正社員で就職しなければという思いのほか、母子家庭なので金銭的に母親を楽にしてあげたかった。姉よりも母親の役に立ちたかったという思いがありました」
最初の就職先は3か月でクビに。母親はそんな娘に対して「次がある」と言った。【~その2~に続きます】
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。