祖母よりも父との距離感がわからなくなった

遥香さんから祖母に対する遠慮、そして祖母から遥香さんに対する遠慮はなくなることはなかったが、中学や高校の時期は親とも距離ができる期間であり、遥香さんは祖母との距離感に居心地の良さを感じていた。その一方、干渉してくる父親との関係は悪化していったという。

「祖母は、学校のプリントを共有するボックスを用意してくれたり、お弁当がいらない日を記すカレンダーを作ってくれたりと、私が祖母に頼み事をしやすいようにしてくれていました。『プリント見せなさい』とか『お弁当はいるの?』など聞かれないでいいことが楽でしたね。

一方の父は、夜遅くに帰ってきて、そこで私とコミュニケーションを取ることで子育てに参加していると思いたいのか、質問責めをしてきて、長時間私の部屋に入り浸ることもありました。私のプライベートに干渉してくるところが鬱陶しくて仕方ありませんでしたね。お酒を飲んできた後の父はとにかく臭くて、私はお酒を飲む男性が嫌いになりました。父のせいです」

高校3年生のときに父親との関係に亀裂が入ってしまう。そのことがきっかけで遥香さんは大学に進学するつもりだったが、就職に変更。勝手に進路を変更したことが父子の縁が切れる原因となった。

「酔っぱらって帰ってきた父に対して、『気持ち悪い』とか『汚い、臭い』とか言ったら、父親から暴力を振るわれました。叩かれたのではなく、父の近くにあったドライヤーを投げつけられたんです。手で顔を守ったから痣(あざ)ぐらいで済みましたが、手を出されたことに、そのときは恐怖を感じ、その後は父に対する怒りがずっと残りました」

そのまま父と会話を交わすことなく、就職を機に高校時代に貯めたアルバイト代で一人暮らしをスタートさせた。

「賃貸の保証人は祖母が叔父に頼んでくれました。父は私に手を出した後に謝ろうとしてくれていたようですが、私は顔を合わすことも拒否して、父を視界にも入れないように実家にいるときは無視を続けました。

卒業や就職のお祝いも祖母と2人きりで行ないました」

結婚を機に一度父との和解を試みるも……。【~その2~に続きます】

取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。

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