【家族のかたち】「父親が嫌いだった…」母親代わりだった祖母との時間よりも優先させてしまったものとは～その１～

取材・文／ふじのあやこ

昭和、平成、令和と時代が移り変わるのと同様に、家族のかたちも大家族から核家族へと変化してきている。本連載では、親との家族関係を経て、自分が家族を持つようになって感じたことや、親について、そして夫や妻、子どもについて思うことを語ってもらい、今の家族のかたちに迫る。

＊

株式会社林商会では、遺品整理で手元に残したものに関する調査（実施日：2024年３月５日～３月19日、有効回答数：10～60代の男女300人、インターネット調査）を実施。遺品整理で手元に残した遺品を聞いたところ、「写真や手紙」が138票と最多で、「アクセサリー・宝石」が124票、「時計」が84票と続いた。「残しておけばよかったと思う遺品はありますか？」という質問では、「いいえ」と回答したのが88%となったが、12%の人が手放して後悔したものがあると回答している。

今回お話を伺った遥香さん（仮名・42歳）は、祖母の遺品のほとんどを受け取れなかった。長い間父親と疎遠だったからだ。

両親の離婚で祖母と一緒に暮らすことに

遥香さんは一人っ子で、両親は遥香さんが中学生のときに離婚。両親の話し合いで遥香さんは父親に引き取られることになったという。

「離婚の理由は、そのときはすれ違いだと聞いていたけれど、後々で祖母から母親が外で男を作ったからだと聞きました。

私は母について行きたかったけど、母親は『元気でね』とだけ私に言ってきて、抱きしめてもくれませんでした。母親から捨てられたという思いがありましたね」

父親は１人では子育てが厳しいと考えたのか、車で30分ほどの距離で暮らしていた祖母を呼び寄せ、同居することになった。

「祖父は私が産まれる前に亡くなっていて、祖母は１人で暮らしていました。祖母の家の近くには父の弟家族が暮らしていて、祖母は私たち家族よりも叔父家族と交流がありました。私たちは２～３か月に一度ほど会うくらいでした。だから同居当初は祖母と暮らすことに戸惑いがありました。小学生ぐらい子どもだったらもっと図々しくいけたかもしれないけれど、あのときはもう中学生で、祖母に対しては他人行儀みたいなところがあったんです」

生理など、思春期特有の体の相談も祖母にはできなかった。孫の体の異変に気付いた祖母から声をかけられて、足りないものは買ってもらえたという。しかし、一緒に買い物に出掛けたときの恥ずかしさを今も覚えていると振り返る。

「生理用のショーツや、胸のサイズが変わったことでスポーツブラではままならないようになっても、祖母には言い出せませんでした。そんな中、祖母に着替えをしているところを見られたことがあって、ブラのサイズが合ってないことが原因のブラ跡がくっきりと残っている姿を気にされて、新しいものを買ってくれることになったんです。それは嬉しかったのですが、下着などを祖母と一緒に選ぶのは恥ずかしかったですね。サイズだけチェックして、かわいい柄などを選ぶ余裕はなかったです」

【祖母よりも父との距離感がわからなくなった。次ページに続きます】