人生百年時代と言われるようになりました。中高年になっても学んだり、新しいことに挑戦したいものです。先人が残した金言からも多くの学びがあるでしょう。第29回の座右の銘にしたい言葉は「虚心坦懐(きょしんたんかい)」 です。
目次
「虚心坦懐」の意味
「虚心坦懐」の由来
「虚心坦懐」を座右の銘としてスピーチするなら
最後に
「虚心坦懐」の意味
「虚心坦懐」について『⼩学館デジタル⼤辞泉』では、「何のわだかまりもないすなおな心で、物事にのぞむこと。また、そのさま」とあります。心の中に余計な偏見や先入観を持たずに、物事をありのままに受け入れる姿勢を指す言葉です。
特にシニア世代にとって、この姿勢は重要です。年齢を重ねることで培った知恵や経験は貴重ですが、それが時に「頑固さ」や「閉鎖的な態度」に繋がることもあります。「虚心坦懐」の心持ちになることで、柔軟で開かれた心で新しい考え方や人間関係を築くことができるのです。
「虚心坦懐」の由来
「虚心坦懐」という言葉は、「虚心」と「坦懐」という語に分けられます。「虚心」の「虚」は「何もない」という意味ですから、何物にもとらわれない心を表します。「虚心」は中国の古典『老子』に
其の心を虚(むな)しくして其の腹を実(み)たす(聖人が治めるやり方は民の心を虚(から)にし、腹をいっぱいにする)
とあり、古くから使用されていたようです。また「坦懐」は、あっさりとしたおおらかな気持ちを指します。この二語が合わさり生まれた言葉とされています。
現代においても、「虚心坦懐」の姿勢は、ビジネスや日常生活、コミュニティ活動など、あらゆる場面でその価値を発揮しています。シニア世代の方々が「虚心坦懐」を座右の銘にすることで、日々の生活がより穏やかで豊かなものになることは間違いないでしょう。
「虚心坦懐」を座右の銘としてスピーチするなら
「虚心坦懐」を座右の銘としてスピーチする際は、自分の考えを押し付けるのではなく、相手の意見や感じ方を尊重する姿勢を示すことが大切です。「虚心坦懐」を実践するためには、自分が話すだけでなく、他者の意見にも耳を傾ける姿勢を持つことを強調すると、説得力が増します。以下に「虚心坦懐」を取り入れたスピーチの例をあげます。
他者と接するときの心がけとしてのスピーチ例
皆さん、本日は「虚心坦懐」という言葉についてお話しさせていただきます。この言葉は、わだかまりを持たずに素直で誠実な態度を取ることを意味します。私たちシニア世代は、長年の経験と知識を持っていますが、その経験が時に心を頑なにし、他者の意見を受け入れにくくすることもあります。しかし、人生の後半をより豊かで充実したものにするためには、心を開き、柔軟な姿勢で他者と接することが大切です。
たとえば、家族との日々の会話や地域活動に参加する際に、相手の話を遮らず、まずはしっかりと聞く姿勢を持つことで、お互いの理解が深まり、信頼関係が生まれます。さらに、新しい趣味やボランティア活動に挑戦する際にも、虚心坦懐の心を持って臨むことで、未知の世界を楽しむことができ、自分自身の成長にも繋がります。私たちはまだまだ学び続けることができます。この「虚心坦懐」を心に留め、日々の生活をより豊かにしていきましょう。
最後に
「虚心坦懐」という言葉は、シニア世代の皆様にとって、心の健康を保ち、豊かな人生を送るための素晴らしい座右の銘になり得ます。この言葉を心に留めておくことで、日常の中で他者との調和を感じ、自己成長の機会を増やすことができます。人生のどの段階においても、新たな学びや出会いは常にあります。心を開き、素直な気持ちでそれらを受け入れることで、より豊かで満ち足りた毎日を過ごしていただければと思います。
●執筆/武田さゆり
国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com