母親は幸せじゃない娘を見て、泣いた
夫への愛情は完全に消えていたが、千穂さんは夫婦生活も拒まなかった。そのストレスに、子育て、夫の監視などから不眠に陥り、子育てがままならないほどの体調不良を起こしてしまう。その姿を見かねた姉は母親に夫の不倫を報告したという。
「体が辛くて子どもの面倒を見れなくなっても夫には頼りたくなかったんです。娘にできる限り触られたくなかったから。だから母や姉を頼ったのですが、そんな私の状態を見た姉がもう黙ってはいられないと思ったのか、母親に夫の不倫を話してしまったんです」
不倫の事実を知り、母親は泣きながら千穂さんを説得してきた。
「母親も、私に別れなさいと言いました。『そんな男と幸せじゃない人生を送らすために、私は愛情を注いであなたを育てたのではない』と、母は泣きながら私に伝えてきたんです。その言葉を聞いて、ちゃんと幸せになりたいなって思いました」
千穂さんは父親も含めて家族で協力して夫の不倫の証拠集めを続け、弁護士にも相談した。夫と離婚が成立したときには、子どもは2歳になっていた。
「夫の家族も巻き込み、夫や不倫相手への慰謝料請求や引っ越しなど、バタバタでした。メンタルの不調をなくすための準備でしたが、体調はより崩しましたね。でも、両親や姉がいたから乗り切ることができ。スッキリしました」
相手が不倫をしていても別れない理由として、愛情がある場合もあれば、経済的な理由もあるだろう。千穂さんにも経済的な理由があったが、それよりも夫と不倫相手が幸せにならないことに執着していていた。マイナスなことへの執着からは誰も幸せにはなれない。母親は子どもが幸せになるために、千穂さんに離婚を促したのだ。千穂さんもやがて子どものために離婚を選択して良かったと思える日が来るだろう。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。