固定電話をきっかけに夫の不倫が発覚
その帰省期間に、夫は浮気をしていた。それに気づいたのは、夫婦の家の固定電話に電話をしたときだった。
「当時はネット回線と家の固定電話が共用になったものを使用していました。ネット回線とセットだったので、固定電話を一応つけていたんです。夫とのやりとりは携帯がメインで、固定電話はほとんど利用していない状態でした。あのときも携帯に電話しても出なかったから、固定電話にかけただけでした。もう夜も遅い時間だったから、夫は当然家に居るだろうと思って。夫は固定電話にも出ませんでした。後で携帯から折り返しがあったときに固定電話にかけたことを伝えたら、『気づかなかった』と言ったんです。なんとなく嘘の匂いがしました。
別日に同じことをしてみました。携帯電話に出た夫は『家にいる』と言いましたが、その後固定電話にかけたのに出なかった。それで家にいないことが確実になりました」
身重だった千穂さんは夫の浮気調査を姉にお願いした。固定電話に出なかった日が同じ曜日だったため、その曜日に姉に夫の会社で張り込んでもらった。夫はまったく警戒することなく、会社から5つほど離れた駅で女性と待ち合わせ、彼女の部屋に入っていったという。
「夫はその女と一緒にスーパーに寄って、知らない家に2人で入っていったそうです。姉はそんな夫の姿を見て、『両親も私もいるから別れなさい』と言いました。私はその言葉に対して、何も答えられませんでした。その頃は出産まであと2か月ぐらいの時期で、別れるのか、それとも別れないのか、どっちが最善かわからなかったからです」
千穂さんは姉に口止めをして、とりあえず無事出産するまではそのままで安静に過ごすことを選択する。普通に接してくる夫に対して愛情が減っていく実感があったものの、それと比例して別れないという思いも強くなったそう。
「夫は月に1~2度ほど私の実家に来ていたんですが、少しの罪悪感もないのか、いつも通りでした。私の体を気遣い、私の両親と談笑をして。姉は私よりも普通というお芝居が下手でしたけどね(苦笑)。
私はいつも通りにしている夫のことが気持ち悪くなって、愛情はどんどん薄まっていきました。それなのに、別れたくはなかったんです。夫に幸せになってほしくなかったから」
不倫を知っていながら、我慢して夫との夫婦生活を続けていた。【~その2~に続きます】
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。