義父が大切だから実父と会わないことを決めた
義父と2人きりの期間にも実父との面会は続き、いつもは母親がやってくれていた送迎を義父がしてくれていたという。その送迎をしてもらっていることに対して罪悪感があった美和さんは受験を言い訳に実父との面会を断る。その行動が美和さんを長年苦しめることになる。
「受験があるから、という建前で実父との面会を断りました。本音は、義父に悪いからです。いつまでも前のお父さんのことを慕っていてはダメだと思ったんです。実父は『高校に受かったらお祝いしような』って言ってくれて、受かったときはメールで伝えました。実父からお祝いしようと誘いがあったけれど、バタバタしていると伝えて終わらせました」
そこから実父との連絡は途絶えたという。
「そこから私から連絡することができなくて、実父からも来ませんでした。私は29歳のときに結婚したのですが、結婚のときも義父に出席してもらうから、実父を呼ぶことはできなかった。呼ぶことができないのであれば連絡するのも気が引けてしまって、できませんでした」
そして、実父は3年前、コロナ禍の中で亡くなってしまった。
「すでに父方の祖父母は亡くなっていたので、実父の葬儀は叔父が行ない、コロナ禍もあって事後報告の連絡だけが来ました。
あれから一度も会わずに、もう二度と会えなくなってしまった。親不幸な娘だと自分のことを思います」
現在、美和さんには1人娘がいて、両親との定期的な交流が続いている。しかし、父親と仲良く話す自分の娘を見て、美和さんは実父のことをよく思い出すという。母親の再婚相手と娘がうまくいくケースは少なく、義父に対して嫌悪感を抱く人も多い。しかし、美和さんは義父からも実父からも大切にされていた。どちらかを優先できなかったことが美和さんの今の幸せな状況を物語っているように思う。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。