2024年4月10日のニューヨーク外国為替市場では、アメリカの消費者物価指数の発表を受けて円安が加速し、円相場は一時、1ドル = 153円台まで値下がりしました。これは1990年以来、およそ34年ぶりの円安ドル高水準になるそうで、今後も外国人が日本に旅行に来る機会が増えると予想されます。

そんな中、逆に日本人が外国に移住するケースも毎年増えております。老後は海外に移住したいという方もいるかと思いますが、海外に移住した場合、今まで掛けてきた年金はもらえるのか? という疑問が生じるのではないでしょうか。

そこで今回は、日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)の税理士 中川義敬が、長年にわたる税理士業務を通じて得た幅広い知識や経験に基づき、海外移住した場合の国民年金ついてご説明いたします。

目次
海外移住しても国民年金はもらえる? もらえない?
海外移住者は国民年金の加入は任意?
海外移住して国民年金に加入するメリットは?
海外移住する際、国民年金を受け取る手続きとは?
まとめ

海外移住しても国民年金はもらえる? もらえない?

結論から申し上げますと、国民年金の納付期間と免除期間を合算して10年以上の場合は、海外に移住しても国民年金をもらうことが可能です。また、受けている年金が老齢年金であって、日本と滞在国が年金の受け取りに関する租税条約を締結している場合、必要な手続きをすることで、税法上非居住者が納めるべき所得税の免除を受けることができます。

年金の受取方法には下記の2種類があります。

1、日本国内の金融機関を指定する場合

海外にお住まいの方でも、日本国内の金融機関を年金の振込先として指定することができます。ただし、「ゆうちょ銀行」を振込先として指定することはできません。

2、海外の金融機関を指定する場合

海外の金融機関を年金の振込先として指定するときは、金融機関名や口座番号等を記載の上、その口座証明、小切手帳の写し、通帳の写し等を添付して提出します。ただし、海外の金融機関への年金の送金は、国ごとに送金通貨を指定しているため、個々に希望する通貨を指定することはできません。

海外移住者は国民年金の加入は任意?

海外に移住することになった方は、国民年金の強制加入被保険者ではなくなります。しかし、日本国籍の方であれば、国民年金に任意加入することが可能です。海外での加入や支払いには手続きや条件がありますが、基本的には自己負担での加入となります。

海外移住者が国民年金に加入する場合、具体的な内容や詳細については、日本年金機構などに直接問い合わせてご確認していただくことをお勧めします。また、社会保障協定を結んでいる国で働く場合は、海外での加入や支払いに特例などがある場合もあるため、個々のケースに応じて詳細を確認することが重要です。

海外移住して国民年金に加入するメリットは?

国民年金に加入するメリットは以下の3つが考えられます。

・メリット1

将来日本に戻る可能性がある場合、国民年金に加入しておくことで、帰国後も年金を受給できる可能性があります。加入期間が長ければ受給額も増えるため、将来の生活設計に役立つでしょう。

・メリット2

国民年金に加入しておくことで、老齢や障害、死亡などのリスクに備えることが可能です。加入者が老齢や障害になった場合には年金を受給することができるほか、加入者が死亡した場合には遺族年金が支給される場合もあります。

・メリット3

国民年金に加入していると、加入期間に応じて国民年金基金に加入できる可能性があります。国民年金基金に加入することで、将来の年金受給額の増額などの特典を受けることが可能です。

海外移住する際、国民年金を受け取る手続きとは?

海外に移住した方が年金を請求する場合、もしくは、年金を受給している方が日本国内から外国に転居する場合、「外国居住年金受給権者 住所・受取金融機関 登録(変更)届」を日本年金機構に提出する必要があります。

「外国居住年金受給権者 住所・受取金融機関 登録(変更)届」の用紙には、(海外の)現住所、年金を受け取る銀行名、支店名、銀行所在地、口座番号などを記入します。現住所を証明する際に日本国内に住んでいれば、市区役所の発行する「住民票」が現住所を証明する書類になります。

一方で、海外在住の場合は「住民票」はありません。そのため、居住国の日本大使館もしくは領事館が発行する「在留証明」が現住所を証明する資料になります。

もし、日本と租税条約を結んでいる国に住んでいて、日本の年金を受け取る場合は「租税条約に関する届出書」を提出することも忘れないようにしましょう。この「租税条約に関する届出書」を提出すれば、原則、年金に日本の税金は課税されなくなるのです。その代わりに、居住国側でのみ、その国の税法に基づいた課税が適用されることになります。

日本と租税条約等を締結している国に関しては、日本年金機構のホームページから確認することができるため、確認しておくとよいでしょう。

まとめ

外務省の海外在留邦人数調査統計によると、2023年10月1日現在で永住者は過去最高の約57万4000人になったようです。新型コロナウイルスの影響もあり、留学や海外在住などでの長期滞在者が減少する一方で、より良い生活や仕事を海外に求めた人などの永住者が年々増加しています。

このまま推移していきますと、少子高齢化の影響もあり、社会保障負担等が益々増加するのではないでしょうか。ご自身のライフプランや、国際的な経済情勢も時間とともに変化します。将来海外に移住を検討している方も、その後の生活の保障として国民年金の受け取り方について、ご検討されてもいいかもしれません。

●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)

日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。

日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com

構成・編集/松田慶子(京都メディアライン ・https://kyotomedialine.com

 

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