母親の寄り添い方は私が求めたものではなかった
会社を辞めたいと加奈子さんが伝えてから、母親は栄養のある朝食を加奈子さんに用意し、娘が帰ってくるまで起きて待っていて温かいご飯を用意してくれていた。しかし、その行為はまったくうれしくはなかったと加奈子さんは振り返る。
「ありがたかったですよ。でも、そうじゃない。嫌々仕事に行くのに、朝にいっぱい食べられるほどの食欲もないし、夜もそう。家に帰ってくるまで母親が起きて待っていることも嫌でした。
私の気持ちに母親は寄り添ってはくれないという思いが強くなって、母親と仲良く話すという行為も苦痛だったんです」
仕事が休みの日には加奈子さんはずっとベッドで過ごすことが多かった。そんなときにリビングから聞こえる3人の声に怒りを覚えるようになり、早く家を出たいと思うようになったという。
「両親と姉が楽しそうに話している声が聞こえてきました。姉はフリーターで、その仕事さえ続かないのに、働かなくても親にかわいがってもらえている。一方の私は、仕事がしんどいと訴えても辞めさせてももらえない。あ、私は親から大切にされていないんだって思いました。そこから、仕事を少し頑張れるようになりました。ただ家を出たい一心でお金が必要だと思ったからです」
実家を離れたときに両親は娘が自立すると喜んでくれたが、加奈子さんの中では家を出るイコール離別だった【~その2~に続きます】
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。