関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、肉親を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。
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今回の依頼者は、幸子さん(仮名・65歳)。最近、庭にゴミを撒かれたり、庭木が傷つけられたりすることが続いたために、私たちに調査を依頼されました。
【これまでの経緯は前編で】
広大な自宅を探偵3人体制で監視
ゴミが撒かれるのは水曜日と日曜日が多かったために、日曜日に調査を開始。東京郊外にある幸子さんの自宅は広大な邸宅で、急遽探偵を追加。3人体制で監視することにしました。
最初の日曜日は何もありませんでした。そして水曜日も同様に何もない。
2回目の日曜日に動きがありました。朝6時から夜まで何も起こらなかったのですが、23時30分ごろに、駅の方向から黒い服を着た小柄な人物がやってきて、監視カメラの死角になるような場所に立ちました。
そして、斜めがけした黒いショルダーバッグの中からビニール袋を出し、その中身をパッと庭に撒いて、駅の方に歩いていったのです。
あたりは暗く、帽子をかぶってマスクをしているので、相手のことは性別さえもわかりません。十分な距離を取って駅まで尾行をします。
その後、その人物は駅の多目的トイレに入っていきます。入るときは黒のジャージの上下だったのですが、出てきたときはスキニーパンツにレモンイエローのサマーニットを着た40歳くらいの女性になっていました。
女性への尾行を続けると、そこから2駅離れたところにある、おしゃれなファミリータイプの大規模マンションに入っていきました。もしかすると、この女性は既婚者かもしれません。
3回目に証拠をおさえることができ、幸子さんに報告すると「誰なのかな? この人のこと、全然わからない。会ったこともないし……主人関係の人かしらね?」と首をひねりながら帰って行かれました。
実は、女性の行動の背景には長年の恨みがあったのです。
【過去の恨みが嫌がらせの発端だった。次ページに続きます】