いじめから一気に性格が内向的に
小学校のときのいじめは無視だけで特に何かをされることはなかった。休み時間はトイレや校舎内をウロウロすることで時間を潰し、なんとかやり過ごしたという。
「学年は5クラスあったので、学年が上がってクラス替えがあると別の友だちができて、無視されることもなくなりました。
でも、そのいじめられていた期間で性格は一気に変わりましたね。何かにすぐに腹を立てるところは変わらなかったけれど、内に秘めるようになりました。内向的で引っ込み思案になったんです」
香苗さんの中で、「自分の意見を相手にぶつけるとその相手から嫌われ、また無視されることになる」という思いがあった。そこからは周囲の空気を読み、自分の意見は封印して、誰かの意見に同調するようになる。
その姿は傍からはおとなしく映り、中学ではいじめの標的にされてしまう。
「小学校から中学に上がると、今までの小さな学区から大きくなって、新しい人間関係を急に作れって迫られる。新しく顔を合わせた人たちの中には今までいなかったような派手なタイプから少し悪いようなタイプまでいて、なんて話しかけたらいいのかさえわからず、うまく友だちを作ることができませんでした」
入学最初は出席番号順に席が決まり、その前後の人と仲良くなっていく。おとなしかった早苗さんは周囲から話しかけられることにもオドオドしてうまく返せず、そのようなことが続くと人は離れていったという。
「小学校のときは1人の子とのケンカからいじめが始まったけれど、中学のときのきっかけはいまだにわかりません。気づいたら、私の存在は“汚い”って言われるようになっていました」
何も悪いことはしていないはず。だからどうしたらいじめがなくなるかさえわからなかった。
【~その2~に続きます】
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。