取材・文/ふじのあやこ

写真はイメージです。

昭和、平成、令和と時代が移り変わるのと同様に、家族のかたちも大家族から核家族へと変化してきている。本連載では、親との家族関係を経て、自分が家族を持つようになって感じたことや、親について、そして子供について思うことを語ってもらい、今の家族のかたちに迫る。

いじめの被害を訴える当事者やその家族がマスコミに多く取り上げられている。訴えを起こしているのはほんの一部である。文部科学省が実施する「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の令和4年度の調査結果では、不登校の小中高の学生(国立、公立、私立)、特別支援学校でのいじめの認知件数は約68万2千人と過去最多となった。そのうち重大事態(※)の発生件数が923件となり、こちらも過去最多だった。

今回お話を伺った香苗さん(仮名・43歳)は、小中学校でいじめに遭う。小学校ではいじめに発展するきっかけがあったが、中学ではそれが見当たらないままいじめの対象になった。【~その1~はコチラ

(※)重大事態の定義は「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」

「臭い」と言われて、制汗剤を全身にかけ続けた

中学校入学当初での席順で出席番号前後のクラスメートと仲良くなることができず、そのまま香苗さんは孤立。それでも移動教室や席替えなどで仲良くなれそうな子を見つけて、一緒に行動していたという。

しかし、普通に過ごした次の日からいきなりその子たちから無視をされ、さらには他の女子グループから酷い言葉をかけられるようになった。

「“汚い”とか“臭い”という言葉を浴びせられました。私に面と向かってではなく、私が近くにいると『なんかこの辺臭くない?』のような感じです。絶対私のことだって思いました。そこから、きっと私がこの人たちに何かしてしまったんだって思って、ずっとそのことだけ考えました。そして、何か思い当たる節があったわけじゃないのに、その人たちを呼び止めて謝りました。そしたら、『キモッ』って悲鳴のような声を挙げられて……。私はまたいじめの標的になったんだって悟りました」

臭いと言われたことを気にして、夜だけでなく朝にもお風呂に入るようになった。スプレータイプの制汗剤を学校にも持っていき、休み時間の度にトイレで全身にかけるようになった。その制汗剤の空になったボトルの多さに母親が気づいたことから、学校で受けているいじめを母親に打ち明けたという。しかし、母親から投げかけられた言葉には強がるしかなかった。

「母親は、私に『どうしたい?』と委ねてきました。どうしたいって言われても、どうしたらいいのかわかりません。黙っていると、さらに『学校は行きたくない?』と聞かれて、咄嗟に『大丈夫』と答えていました。当時は学校に行かないという選択肢はありませんでした。それに、母親に学校に行くという当たり前のことさえできないと落胆されたくなかったんです」

【教室でいじめっ子のカバンを思いっきり踏みつけた。次ページに続きます】

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