原因は私ではなく夫だと思い込んだ

拒否されたことを受け入れたくなかった麻衣さんは次に夫の不倫を疑った。自分が原因ではなく、夫側に拒否の原因があると思いたかったからだ。

「夫は40歳近いといってもまだ30代の男性で性欲がそこまで落ち着くとは考えられなかったんです。私は容姿に努力をしていたから、私が原因ではないと思いたくて、それまで一度も怪しいと思ったこともないのに、夫の身辺調査を始めました。夫がお風呂に入っているときに服のポケットやカバン、そして携帯をチェックするようになりました。そこで会社の同僚と思われる女性とのメールを見つけたんです。体など特別な関係を思わす確実なクロではなかったものの、グレーという感じ。私はすぐに夫を問いただして、何もないと言われても信じることができずに、メールにあったその会社の仲良しグループを退会させました」

夫が麻衣さんの要望を聞き入れてくれたことで麻衣さんの要求はエスカレートしていく。飲み会があると言われたらそのメンバーをチェックしたり、普段のメールのやりとりを夫の目の前でチェックしたりしていた。少しでも夫が反抗してきたときには物を投げつけるようになっていたという。

「少しでも反抗されると、それが浮気を認めたと認識してしまっていました。そこでカッとなると、もう自分でも覚えていないくらいわけがわからなくなっていました。

直接殴ったり、蹴ったりすると罪悪感が出たかもしれないけれど、物を投げるという行為は直接触れていないからそこまで罪悪感がありませんでした。何個か投げて当たらないものもあったし、ケガしそうなものは投げていなかったので。でも、投げられた側、暴力を振るわれた側からするとそんなの関係ないですよね……」

麻衣さん夫婦は現在一緒には暮らしているものの、家庭内別居のような状態が続いている。この状態は離婚を回避できた結果であり、「子どもが大きくなるまで」という期限付きだという。

セックスレスは今は離婚事由になるものであり、DVももちろんそう。セックスレスは夫側が拒否されることのほうが多く、されている側に妻がなったときには周囲に相談できないという。そして、DVは妻側がされることが一般的とされており、されている側に夫がなったときには周囲に相談できずに我慢してしまうことが多い。麻衣さん夫婦はどちらも周囲に相談できずに家庭内別居状態であることを周囲は誰も知らないそう。外では仲良し夫婦を演じ、家では一切会話もない夫婦の中で育つ子どもの心が心配でならない。

取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。

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