取材・文/ふじのあやこ

時代の移り変わりとともに、変化していく家族のかたち。幼少期の家族との関係を振り返り、自身も子供を持つようになったからこそわかるようになった思いを語ってもらいます。~その1~はコチラ

今回お話を伺ったのは、関西にある企業で内勤の仕事をしている歩さん(仮名・35歳)。歩さんは兵庫県出身で両親と3歳上に姉のいる4人家族。気分屋の父親に合わせる家族3人という構造は小さい頃から続いていたものの、大学進学を機に家族はいい意味でバラバラになっていきます。

「父は下の子の僕を大学に入れたことでまったく干渉しなくなったし、母は仕事に復帰してから外のことに集中していました。そして姉は僕より前に大学進学で地方に行っていたので、家族団らんでどこかに出かけることも、食事に行くこともなくなりました。でも、それは仲が悪くなったというより、自然に。子供が大人になるにつれて、よくあることだと思っていました」

熟年夫婦のバランスが、父の早期退職で一気に崩れていった

歩さんも就職後は大阪市内で一人暮らしを始めます。別々に暮らすようになってからは、1年に2度くらいのペースで、両親と3人で食事に行く機会を作っていたそう。

「典型的な親孝行という感じなんですが、自分で稼げるようになってから、両親の誕生日や年末年始などに一緒に食事に行って、もちろんごちそうするようになっていきました。安い店なんですけどね(苦笑)。両親はどちらも10月生まれで、お祝いは昔から2人同時に行っていたんですよ。両親の誕生日祝いはずっと3人で、僕と姉が誕生日祝いを一緒にすることは一回もありませんでした。その理由は、父と姉が疎遠状態だったから。でもその疎遠も、一般の父と娘って遠い存在になっていくのは当然なのかなって。姉は東北の大学に行って、その後は東京で仕事をしていたから、両親と同じ関西にいる自分とは両親との距離も違って当然だと思っていました」

両親の仲も特に変化しているようには見えなかったと言います。

「どういう経緯で母親が再び働くようになったのかは知りませんが、母親は家族だけの空間で生活するよりも楽しそうでした。父からの小言にも『気持ちが分散されているから』とこたえないようになっていったみたいですし。父も年を取ったことで丸くなったから、すべてがうまくいっていると思い込んでいたんです。実際、両親が2人きりのところは見ていないし、1年に2度ほどしか顔を合わせていないのに、当然のように安心しきっていたんですよね」

しかし、父親が57歳の時に早期退職をすることになり、2人のバランスが一気に変わります。その生活の変化が母親の負担になっていったそうで……。

「父親は誰にも相談なく、勝手に早期退職を決めたんです。退職金もプラスαになり、家もローンを払い終わっていたこともあり、これからはゆっくり趣味を楽しむ時間が欲しかったようです。その考えを反対する気はないけど、事後報告ではなく、せめて母親には相談するべきだったと思います。そこから一気に夫婦の関係は変化していき、退職して2年後に両親は離婚することになりました」

【父との同居を決めたとき、母親は僕に「ありがとう」と言った。次ページに続きます】

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