待ち合わせていた英国紳士風の男性が流した涙の理由
奥様は何度もスマホを確認し、ソワソワしつつ、有楽町から新橋までのんびりとしたペースで歩いていきます。どうやら、相手から「遅れる」などとの連絡があったのでしょう。
ほとんどの飲食店が閉まり始めており、これから会うならホテルもあるかもしれない。私たちも気合いが入ります。
すると銀座八丁目のある有名レストランの前で、英国紳士風の男性が待っていました。彼は大きな紙袋を持っており、奥様は駆け寄ります。
男性は奥様に封筒に入ったなにかを渡し、奥様はしきりに感謝している。どうも2人のやりとりから、男性が行けなくなった公演のチケットを、奥様が買い取っている様子でした。そして、大きな紙袋には、おそらくファン用のグッズが入っているのでしょう。奥様はすべてを受け取り、男性の手を取っていました。
男性はハンカチで目頭を押さえており、奥様は男性の肩をなでていました。大人になった息子が母に甘えるような姿でした。奥様は小さなプレゼントを男性に渡し、男性を見送ります。この間は約10分程度。
奥様はその後、紙袋を持ってタクシーに乗ります。ペアの探偵が慌てて乗って追いかけると、大田区内にある奥様の実家にタクシーを横付け。慣れた様子でカギを開けて中に入り、朝まで出てきませんでした。
翌日は、奥様のお母様でしょうか、80代くらいの女性と、再び銀座まで行き、ランチにお寿司を食べて解散。昨日行った劇場の近くを通りかかり、顔見知りを見かけて、母娘で挨拶をしていました。おそらく、お母様もこの歌劇団のファンなのでしょう。
その翌週も調査したのですが、こんどは関西地方まで遠征。東京駅で待ち合わせている女性の中には、先週、奥様とホテルでお茶をしていた女性もいました。この日は奥様は日帰りでしたが、皆さん宿泊しているようでした。
以上の調査結果を依頼者・恒夫さんにお見せすると、「妻はこの前までは韓流が好きだったはず。まさかこんなことをしているとは」と驚きながらもホッとしていました。
「娘と同じく、韓流のアイドルが好きで、新大久保などに行っていたのは知っていましたが。あ、この劇団はお義母様が好きですね。きっと影響を受けていたのでしょう。私に言うと、いろいろ面倒だと思われたんでしょうか。でも、浮気でなくてホントにホッとしました。ありがとうございます」
その後、恒夫さんが「君を失いたくなくて、調査をしてしまった」と奥様にわびたところ、「もう私、現実の男は飽きたの」と言ったそう。そして、広い家のほとんど恒夫さんが行かない部屋は、パンフレットやポスターで埋め尽くされていたとか。
「なにせ、部屋が多く、居間と自分の書斎しか行かないもので……私も確認すればよかったですね。あの英国紳士は、ファン仲間で9月に亡くなった女性のご主人だそうです。奥様が亡くなったのを、ずっと引きずっていたところ、やっと立ち直って、遺品であるファングッズを妻に託したところだったそうです」
この調査をきっかけに、恒夫さんの心はおちつき、奥様は堂々とファン活動に身を入れることができ、いい結果になったと喜んでおられました。
探偵・山村佳子
夫婦カウンセラー、探偵。JADP認定メンタル心理アドバイザー、JADP認定夫婦カウンセラー。神奈川県出身。フェリス女学院大学卒業。大学在学中に、憧れの気持ちから探偵社でアルバイトを始め、調査のイロハを学ぶ。大学卒業後、10年間化粧品メーカーに勤務し、法人営業を担当。地元横浜での調査会社設立に向け、5年間の探偵修業ののち、2013年、リッツ横浜探偵社設立。依頼者様の心に寄り添うカウンセリングと、浮気調査での一歩踏み込んだ証拠撮影で、夫婦問題・恋愛トラブルの解決実績3,000件を突破。リッツ横浜探偵社 http://www.ritztantei.com/