社会での女性の地位向上はまだまだ遅れてはいますが、結婚してからも仕事を続ける妻が、家事・育児を一人でこなすのではなく、夫と分担するという考え方が支持されるようになってきています。その一方で、「オレが働いて収入を得ているのだから、対価のない家事・育児は妻がやるのが当たり前」と考えている男性たちも、まだ少なくないというのが実情です。

日常の中で妻たちを怒らせる、夫たちの無神経な発言を「地雷ワード」と呼びます。

夫婦問題研究家として、相談件数4万件以上を手がけた夫婦カウンセリングのパイオニアである岡野あつこさんを監修者に迎えた『無自覚な夫のための妻の地雷ワード事典』から、妻をイラっとさせる地雷ワードをご紹介します。妻からは共感の嵐ともいえる言葉ばかりで、夫からは「そんなことで怒るの?」という気づきがあるはずです。今回は夫婦円満であり続けるためのコミュニケーションのコツについて、ご紹介します。

監修/岡野あつこ

夫婦であっても、もともとは「他人」ということを忘れずに

夫婦の関係をあらためて振り返ってみましょう。結婚して暮らしを共にするようになってから、パートナーに対してどのような態度で接していたかについて、思いを巡らせたことはありますか?

ここで夫婦の会話の一例として、朝食の時間を挙げてみましょう。
妻「パン、もう一枚食べる?」
夫「いらない」

もう一つは帰宅後、テレビをずっと見ている夫との会話です。
妻「〇〇、お風呂に入れてほしいんだけど」
夫「いやだ。今日は疲れた」

どこの家庭でも、これと似たような会話が交わされているかもしれませんが、ここで気づいたことはありませんか? 夫婦ではなくても、仲の良い友人関係であればこの程度の会話は成立するかもしれません。でも、社会人であればふつう、誰かと会話する際に「いらない」「いやだ」といった受け答えをすることはまずありません。

ここで抜け落ちているのは、相手を気づかう心です。人はみな、他人とのコミュニケーションでは相手に不愉快な思いをさせないように、言葉を選んでいるはずです。実際、言葉づかいひとつで、人の心というのは簡単に傷ついたり、喜びを感じたりするものです。そして、「親しき仲にも礼儀あり」という言葉通り、家族に対してもぞんざいに接していいということはありません。

先の会話では「もうお腹がいっぱいだから大丈夫。ごちそうさま」と返せばいいはずです。「今日は疲れた」のは妻だって一緒なのですから、家事で手の離せないパートナーを見たら、疲れているのはお互い様だし、「子どもと楽しくお風呂に入るよ」と、自分を奮い立たせればいいはずなのです。

家族相手だから、という“甘えの気持ち”が生じていませんか?

この言葉が出なかった背景には、夫婦という関係性、すなわちパートナーに対する「甘え」があります。つまり、「家族だから、こんな言葉づかいをしても許してくれるだろう」という思い込みのせいなのです。そして、多くの人は夫婦と思うからこそ、相手に対する「義務」のようなものにしばられてもいます。「夫としての義務は仕事」とか「妻としての義務は家事・育児」などの古臭い固定観念にとらわれ、そんな自分に比べると「君(あなた)はできていないじゃないか」と、相手の生活態度などを責める際の材料としてしまうことも多いのです。

そこで提案したいのが、ときには夫婦であっても、相手を「他人」と思って敬うことです。もともと夫婦とは、他人同士がたまたま縁あって家族になっただけの関係です。そう考えれば、相手に甘えたことばかり言うのはおかしいはずです。パートナーと適度な距離感で接することができれば、言葉づかいも慎重になり、より相手を気づかい、尊重し合いながら良好な関係を保てるようになります。

妻が夫に言ってはいけないワードもあり!

夫が妻に言ってはいけない「地雷ワード」があるように、妻が夫に言ってはいけない言葉もあります。妻のみなさんは、ここで紹介しているような言葉を発していないかチェックしましょう。

男のくせに

「男らしさ」に価値観を置いている男性にとって、そこを否定することは「男として存在価値がない」と言われるのと一緒なので、夫婦関係に深い溝をつくる可能性も。

……(無視)

不機嫌な妻が夫を無視。その発端は何かを「察してくれなかった」など夫に原因があるのでしょうが、言葉にしないと夫も訳がわからず、逆ギレを招くかもしれません。

あなたの両親って、本当にありえなくない?

夫の実家に関する侮辱や悪口は夫婦間の厳禁ワードです。たとえ夫が、身内に責められるべき原因があると理解していても、他人からは否定されたくないものなのです。

100%私が正しいよね

夫婦間の口論で一般論を持ち出しながらこんなふうに夫をやりこめるケースがあります。夫婦ゲンカで大切なのは収め方ですが、自分だけが正しいと主張するだけでは、相手を意固地にさせ、解決を難しくするので要注意です。

この間だって

「あのときだって」と過去のことを今のケンカに強引につなげて相手の非を責めたところで、何も解決しません。話を脱線させながら相手をひたすら問い詰めるようなもので、常習犯のような扱いをされた夫の反発を招きます。

* * *

無自覚な夫のための妻の地雷ワード事典
監修/岡野あつこ
日本文芸社 1,210円

岡野あつこ(おかの・あつこ)
夫婦問題研究家、公認心理師、社会デザイン学MBA。目白短期大学非常勤講師。
1991年に離婚相談室を設立、相談件数4万件以上を手がけた夫婦カウンセリングのパイオニア。離婚・夫婦問題カウンセラー養成講座で後進を育成。マル秘テクニックを交えた的確なアドバイスが好評。NPO日本家族問題相談連盟理事長。『ある日突然妻がいなくなった―聞こえていますか、妻の本音』(ベストブック)、『産後クライシス なぜ、出産後に夫婦の危機が訪れるのか』(角川学芸出版)、『最新 離婚の準備・手続き・進め方のすべて』(日本文芸社)、『夫婦がベストパートナーに変わる77の魔法』(サンマーク出版)ほか30冊以上の著書があり、総合情報サイト「All About」の離婚ガイドも担当。テレビ、雑誌などのメディアに多数出演するほか、YouTubeチャンネル「岡野あつこチャンネル」を運営。

 

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