パワハラという言葉は今や、多くの場面で頻繁に聞かれる言葉となりました。職場のパワハラには、いくつかの類型があります。暴力や暴言、厳しすぎるノルマを課したり、大量の作業を押し付けたりすることはパワハラの典型的な例です。その一方で、まったく仕事を与えないこともパワハラになるのです。

今回は、「仕事を与えない」というタイプのパワハラについて、人事・労務コンサルタントとして「働く人を支援する社労士」の小田啓子が解説していきます。

目次
仕事をふらないのはパワハラに当たる?
わざと仕事を与えない… パワハラの実例
仕事を与えない上司がいる場合の対処法
まとめ

仕事をふらないのはパワハラに当たる?

本人が仕事をする意欲があるにもかかわらず、仕事をふらないことはパワハラに当たるでしょうか? 業務上の合理性がないのに、仕事を与えなかったり、本人の経験・能力とかけ離れた低レベルの仕事だけを命ずるのは、「過少な要求」タイプのパワハラに該当すると考えられます。

パワハラというと厳しい要求やきつい作業を思い浮かべる人も多いかと思いますが、仕事をふられないというのも、精神的なダメージを受けるものです。特に他のメンバーが忙しく働いている中で、仕事がないという状態におかれると、いたたまれない気持ちになる人もいるでしょう。

また、十分な経験や能力を有しているのにもかかわらず、理由もなく単純な作業ばかりさせられたら自尊心が傷つく人も多いと思います。ここで問題なのは、業務上の合理性があるか、ということです。

仕事をふらない場合は、なぜそのような扱いに至ったのかということを、上司が客観的な事実を示して説明できるかどうかが重要です。合理的な根拠も示されず、仕事をふらない、誰にでもできる作業しか命じない状態を続けるのは、部下に大きなストレスを与えることになり、パワハラと認められる可能性は大きいと言えます。

わざと仕事を与えない… パワハラの実例

仕事を与えない、いわゆる「過少な要求」タイプのパワハラは、その背景にあるものを見ていく必要があります。

このタイプのパワハラが起こる原因は、一般に次のようなことが考えられます。

・管理職などに対する退職勧奨が目的の嫌がらせ
・部下の何らかの行為に対する報復、見せしめ
・上司の好き嫌いや主観による行為

実際にどのようなパワハラが行なわれているのか、事例を挙げて解説していくことにします。

退職勧奨を目的としたパワハラ

・ 部署の他のメンバーのいる場所から、離れた倉庫の片隅にデスクを置かれ、一人だけで雑用などをやらされた。
・ 管理職である社員から本来の仕事を取り上げ、掃除や草むしりなどの作業を長期間命じた。
・ 営業部から、説明もなく突然資料室への移動を命じられ、ほとんど仕事を与えらなかった

これらは、いずれも退職勧奨を目的としたパワハラで実際にあった例です。

企業が業績不振などにより、早期退職などをすすめることはよくあることですが、その対象は明確に基準がなければなりません。さしたる理由もなく特定の人間を狙い撃ちして、退職に追い込むのはあってはならない行為です。

一人だけ人間関係から切り離したり、一方的に仕事を与えない、本人の経験や能力を無視して単純な作業のみをさせることは、退職勧奨という目的を超えた嫌がらせであり、パワハラと認定される可能性は極めて高いと言えるでしょう。

報復・見せしめのパワハラ

・ 家庭の事情により転勤を拒否した開発部の社員を、業務の中核プロジェクトからはずし、雑用以外仕事のない状態に置いた。
・ 会社の不適切な経理処理を指摘した社員を、経理とは無関係な倉庫業務に配置転換した。

このように、部下に対する報復のために仕事を取り上げる行為も時として見られます。

さらに、労働組合を結成した社員、育児休業を取得した社員などに対して、仕事を与えない嫌がらせも報告されています。これらはパワハラどころか違法行為に当たるものも多く、訴訟に至る事例もしばしば見られます。

上司の主観によるパワハラ

・ 客観的に能力差が認められないにもかかわらず、自分のお気に入りである部下だけに仕事をふり、他の部下はほとんど無視して仕事を分担しない。
・ 同じ部署に男女1名位ずつの新人が配置されたが、会議などには男性社員のみを参加させ、女性社員には簡単な仕事しか与えなかった。

これは、業務上の必要性に関係なく、上司が自らの好き嫌いや主観だけで仕事を与えない事例です。

まったく理不尽であり、仕事をふられない部下が屈辱感を抱くのは無理もありません。会社がその上司に指導し、社内全体にハラスメント防止の啓発活動をすべき事案です。

仕事を与えない上司がいる場合の対処法

仕事をほとんど与えない上司に対して、どのように対処したらよいでしょうか? 対処法は、上司がそのような行為をする理由によって異なります。上司自身の性格や価値観に問題がある場合は、会社の人事などに相談することを考えましょう。

好き嫌いによって部下に仕事を与えない上司、男女の役割分担などに対する思い込みがある上司などは、パワハラに対する意識が低く、部下の教育に問題のある上司と言えます。会社側にはパワハラを防止する義務があるので、上司を指導することや、配置転換を考えなければなりません。周囲の人の協力を得て、ハラスメントについての啓発活動を会社に訴えていくことも一案です。

一方で、仕事を与えない理由が退職勧奨や報復であった場合、対処法は難しくなります。上司の行為に問題があっても、その行為を会社が容認、あるいは加担している場合も多く、会社に訴えても何もしてもらえないこともあります。

こうした場合は、転職に気持ちを切り替えて退職するのも悪い選択ではありません。しかしながら、会社や上司からあまりに理不尽な扱いを受けた場合は、外部の機関に相談するなどして、法的な解決を図ることも視野に入れたほうがいいでしょう。

まとめ

仕事を与えない、いわゆる「過少な要求」型のパワハラは近年増加しています。なかにはかなり悪質なものもあり、裁判に持ち込まれる例も少なくありません。相手に精神的なダメージを与えて追い込む行為は、根本的に相手に対する敬意を欠いています。お互いを尊重することは、ハラスメント防止の基本であることを忘れてはなりません。

●執筆/小田 啓子(おだ けいこ)

社会保険労務士。
大学卒業後、外食チェーン本部総務部および建設コンサルタント企業の管理部を経て、2022年に「小田社会保険労務士事務所」を開業。現在人事・労務コンサルタントとして企業のサポートをする傍ら、「年金とライフプランの相談」や「ハラスメント研修」などを実施し、「働く人を支援する社労士」として活動中。趣味は、美術鑑賞。

●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com

 


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