夫への失恋を彼氏が救ってくれた
そこから夫婦の会話は事務的なものだけになった。一緒に食事をすることはあっても会話はなし。それでもしばらく経つと前のように戻れると凪咲さんは思っていた。その願いはかなう。
夫婦はまた同志のような関係になり、家で2人で晩酌をしている中で、夫はあっけらかんと「付き合う人ができた」と伝えてきたという。
「勝手なんですけど、嫌だって思いました。相手の女性も既婚者で『割り切っている関係だからいいんだよね』と言われたら、嫌とは言えませんでした。
夫は付け加えて、『凪ちゃんもいいからね』と言いました」
夫婦は「どんなに遅くなっても帰って来ること。外泊はしないこと」だけを決めた。凪咲さんは夫婦生活はもちたくなかったが、「あのときはまだ夫のことは好きだった」と振り返る。その失恋のような痛みを救ってくれたのが、今の彼氏。彼とは、プラトニックなセカンドパートナーの関係だという。
「夫が他の誰かを抱いていると思うと、一時は気が狂いそうになりました。自業自得なのに……。もう別れたいなってずっと思っていましたね。一緒にいるのに虚無感もすごかったですし。でも、人間て環境に慣れてくるんですよね。段々とそれが日常になっていきました。
そんなときに彼に出会ったんです。彼は職場の先輩で、バツイチ。子どももいて、もう結婚はいいと言っている人です。彼に出会って受け入れてもらえたとき、ずっと寂しかったんだってわかりました」
凪咲さんは「今は彼のほうが好きで、夫のほうが一緒にいてホッとできます」という。夫のほうはというと、現在体の関係のある相手は凪咲さんが知っているだけで2人目だという。お互いに離婚の意志はなく、同意済み。
婚外恋愛を新しい価値観として受け入れられる人はまだ少ない。受け入れる人が多くなったとき、結婚の制度自体はどうなってしまうのだろうか。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。