お互い離婚への固い意志はなし

夫は瑛美さんを無視するようになった。話しかけても鬱陶しそうな顔を一度向けるだけ。子どもは何度かは父親と話していたが、母親と父親の関係を見て、父親に話しかけることをしなくなったという。ここから家庭内別居が始まる。

「最初は無視されるだけで、それでも夫のご飯は用意して、一緒に食事をする時間はありました。それが徐々に遅く帰ってくるようになって食事の時間が合わなくなった。何度か用意した食事に手を付けられないことがあり、作らないようになったらあっちは食べて帰ってきたり、コンビニのご飯の容器をゴミ箱で見かけるようになりました。

ご飯を別にすると洗濯も別になり、夫は帰宅と同時に自室に籠るようになって、家庭内別居が出来上がりました」

現在に至るまで夫婦の話し合いは一度だけ。離婚の意志があるかどうかと今後のお金の確認をしたという。

「子どもが小学校に上がるときに話し合いました。私からではなく、夫から話しかけてきたんです。苗字が変わるなら今というタイミングだったし、夫には離婚の意志があったんだと思います。でも、『(離婚するかどうかは)決めていい』と言われたから、私は『子どもが大きくなるまでは』と言いました。夫はそれに対して何も言いませんでした。

その後はお金についての話になり、今までは共通の口座に夫の給料が振り込まれてそこから生活費を使っていたんですが、話し合いの後は別の口座に生活費と養育費が振り込まれるかたちになりました。家賃や光熱費の引き落とし口座にも夫は毎月入金してくれていました。私はそこから今まで夫の収入がいくらなのか知りません」

前述した調査の中で、別居ではなく家庭内別居を選んだ理由として、女性は「仕事、子どもの学校など普段の生活を続けるため」、「お金がかからないから」といった内容を挙げている。瑛美さんも同じ理由で現在も家庭内別居を続けている。調査には、別居して夫婦関係はどうなったのかの問いもあり、「変化なし」が37%に対して、「離婚した」は13.8%にとどまっている。瑛美さんも今はこのままという変化なしを望んでいるが、将来となると「わかりません」という。一度ここまでこじれてしまうと、変化なしを望んでいるというよりも、関係修復にも、離婚にも動けないというのが本音なのかもしれない。

取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。

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