乳飲み子を置いて、父親は帰ってこなくなった
娘は生後半年の孫娘を連れていた。手つきは危なっかしく、「なんで子供が子供を産んだんだ」と思ったという。
「産みっぱなしの私が言うのもなんだけど、子供を育てるって大変。多くの手間と時間がかかるし、子育て期間中は働けない。お金がなければ育てられない贅沢品なんですよ。それなのに、子供を産んで、しかも父親はダンサーだって。写真を見せてもらったらすごいイケメンなの。でも、2週間も帰ってこないし、彼の携帯電話は解約されていたと。この子は捨てられたと直感して、“ウチにしばらくいなよ”って言っちゃったの。この子は母である私に、そして夫に捨てられ、なんてかわいそうなんだって」
娘夫婦が住んでいたアパートを解約しに行ったら、赤ちゃんが住んでいたとは思えないくらいのゴミ屋敷だったという。澄恵さんの恋人と2人で、片づけるのに3日かかった。
「娘と孫との3人の生活は、大変だった。娘は義母が身の周りの世話を全部していたから、飲みっぱなし、食べっぱなし。自分がしてほしいことばかり伝えてきて、他人への感謝がない。“働け!”と𠮟りつけて外に出したら、ガールズバーとかキャバクラとかに行くの。手っ取り早く稼げるからだって。お金ができると整形やら豊胸手術やらをして、どんどんキレイになっていくんです」
孫娘が3歳になったころ、娘はお風呂にかわいいおもちゃを持ち込み、孫娘の入浴姿を撮影していたという。
「なんか嫌な予感がして、“女の子が風呂に入るところなんて写真を撮るもんじゃない。消しなさい”と言ったら“わかった~”と、けだるい返事をしていました。その後も、似たようなことがあり、そのたびに“消しなさい”と叱り、その場で削除させていました。そして、そのうちに“彼氏と住む”と家を出て行った。あのときはホッとすると同時に、孫が心配になりました。自分で育てていない娘よりも、抱っこして成長を見守った孫の方が気になる。私の場合、育てていないと母になれないし、産まなくても育てていれば母なんだと思ったんです」
【孫は7歳からアイドル養成所に通っていた……後編へと続きます】
取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)などに寄稿している。