贈与を行なう人を贈与者、贈与によって財産を受け取った人を受贈者といい、贈与税の申告や納税義務があるのは、受贈者側です。受贈者は自身が贈与を受けた財産のうち、贈与税の課税対象となる金額を計算して、申告期限内に申告をし、その申告額から計算した贈与税額を納めなければなりません。正しく申告ができないと、ペナルティが発生するリスクもあります。

そこで今回は、日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)の税理士 中川義敬が、長年にわたる税理士業務を通じて得た幅広い知識や経験に基づき、贈与税の申告方法や申告期限と、申告期限を過ぎた場合のペナルティついてご説明いたします。

目次
贈与税の申告期限はいつからいつまで?
申告期限を過ぎるとどうなる?
もし申告期限を過ぎたらどうすれば良い?
贈与税を申告する流れとは?
贈与税の申告は自分でできる?
贈与税の申告に必要な書類とは?
まとめ

贈与税の申告期限はいつからいつまで?

贈与税の申告期限と納税期間は、所得税の確定申告の申告期限と同じで、贈与した年の翌年2月1日から3月15日までです。

申告期限を過ぎるとどうなる?

贈与税の申告をしなければならないのに申告をしなかった場合、下記ペナルティの対象になります。

・延滞税
・無申告加算税

延滞税とは

延滞税とは、納めるべき贈与税を期限内に納めなかった場合に発生する、利息のような性質の税金です。贈与税の法定納税期限(所得税の確定申告と同じ期限)の翌日から贈与税を納付するまでの日数に対し、納めていない贈与税額に対して発生します。

無申告加算税とは

納めるべき贈与税があるにもかかわらず、申告を行なっていなかった場合、申告していない贈与税額に対して、延滞税とは別に無申告加算税が課される場合があります。

無申告加算税は、申告期限後に自ら申告を行なった場合、本来納税すべき金額の5%を追加して支払わなければなりません。しかし、税務署から調査通知を受けた後に申告を行なった場合は10%(贈与税額が50万円を超える部分は15%)、さらに税務署からの更正等を予知して行なったと認められる申告であれば、15%(贈与税額が50万円を超える部分は20%)を支払う必要があります。

もし申告期限を過ぎたらどうすれば良い?

もし申告期限を過ぎていた場合には、すぐに申告書を提出していただく必要があります。ご自身では作成や提出が難しいと思えば、相続に詳しい税理士に相談するのが良いでしょう。

贈与税を申告する流れとは?

贈与税の申告は、贈与税の申告書を必要書類とともに税務署に提出して行ないます。提出先は、原則として受贈者の住所を管轄する税務署です。申告書は、窓口提出、郵送提出、電子申告のいずれかの方法で行ないます。

窓口提出

作成した贈与税の申告書の書面を、税務署の窓口に持参して提出する方法です。税務署の受付時間内であれば、持参した申告書の控えに、その場で職員から収受日付印をもらうことができます。

もし税務署の受付時間外の場合、職員に直接手渡すことはできませんが、税務署の「時間外収受箱」に投函して提出することも可能です。

郵送提出

郵便又は信書便により、申告書を税務署に送付する方法です。申告書は「信書」にあたるため、荷物扱いで送付することができません。

提出日については、その郵便物や信書便物の通信日付印により、表示された日を提出日とみなすこととなりますが、それ以外の場合には、税務署に到達した日が提出日となります。いずれにせよ郵送の場合は、申告期限に間に合うように、ゆとりをもって提出することが大切です。

なお申告書に、申告書の控えと返信用封筒を同封することによって、収受日付印のある申告書の控えを返送してもらうことができます。これにより、税務署に到達した事実とその日付を確認することが可能です。

電子申告

e-Taxというシステムを使って申告書のデータを送信して申告する方法です。国税庁の確定申告書等作成コーナーで作成した贈与税の申告データや、e-Taxに対応可能な会計ソフトで作成した申告データを用いて申告する方法が一般的となります。

ただし、利用を開始するには、マイナンバーカード方式(マイナンバーカードをICカードリーダライタで読み込む方法)、またはID・パスワード方式(税務署職員による対面確認で、マイナンバーカード方式の暫定措置)による本人確認等を行なうといった準備が必要です。

贈与税の申告は自分でできる?

暦年贈与の方法で贈与を行なう場合には、基礎控除額の110万円を控除した残額に贈与税が課税されます。現金の贈与であれば、現金の金額から基礎控除を控除した残額に、定められている税率をかけるだけです。比較的簡単に計算することができるため、最寄りの税務署に行って、ご自身で申告をすることもできるでしょう。

ただし、不動産や未上場株式などの贈与は、その評価額を計算する部分の難易度が高いため、また、専門的な知識がないと減額できる方法などもわかりません。そのため専門家に作成を依頼することをお勧めします。

贈与税の申告に必要な書類とは?

贈与税の申告書にマイナンバーを記載する必要があるため、本人確認書類が必要です。マイナンバーカードがあればそれで事足りますが、ない方は番号確認書類と身元確認書類の提示、または写しの添付が必要となります。

また、父母・祖父母から18歳以上の子や孫に、年間110万円超の贈与をした場合は、贈与を受ける人の戸籍謄本が必要です(課税価格が300万円を超える場合)。住宅取得資金の贈与や配偶者への自宅の贈与など、非課税の規定を使う場合には、贈与する人と受ける人の関係を証明する戸籍謄本、源泉徴収票等、対象となる住宅の契約を確認できる書類、不動産の登記事項証明書が必要になります。

そして、相続時精算課税制度を利用する際、贈与を受ける人は戸籍謄本が必要で、贈与者の戸籍謄本と60歳に達した日以後の住所を証する住民票の写しを添付することが必要です。

まとめ

贈与税の申告書の作成には、申告額や税額の計算に多くの労力がかかります。 特に不動産などは、その評価が難しく、専門知識がなければ価格を特定するだけでも大変です。また、申告書に添付する必要書類についても個別のケースで変わるため、せっかく提出したのに書類が足りないということになると、出直しということもあり得ます。

万が一、財産の価格を少なく申告してしまったり、基礎控除額以下になると見誤って申告しなかったりした場合、延滞税や加算税のペナルティを受ける可能性も。現金の贈与などは比較的簡単に申告書を作成できますが、不動産などの贈与をお考えの方は、相続に詳しい税理士にご相談することをお勧めいたします。

●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)

日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。

日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com

構成・編集/松田慶子(京都メディアライン ・https://kyotomedialine.com

 

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