証拠としては弱いが、離婚の目的は果たせる可能性が高い
ひとまず、以上を千穂さんに報告すると「ウチの店で何をやっているんだ!」と激怒していました。
「ウチは、健全な店なんです。こういう従業員同士のイチャコラがあると、店の雰囲気が悪くなる。このところ、数字が微妙に落ちていると思ったらこういうことだったんですね!」
千穂さんは、それまで夜に来ていた常連さんが、ランチ時間に顔を出すことも不思議に思っていたそうです。
「こういうことに寛容な人は、女性がいるお店に行きます。そうじゃないから、ウチみたいな店に来る。こういう粘っこいのはダメなんですよ。このところ、私はもっぱらランチを回していて、夜に顔を出していないから、こういうことになったのかもしれない……」
夫と女性の性交渉の有無についてはこの証拠からはわかりません。
「コックは片付けや仕込みで閉店後はてんやわんや。だから2人きりになれる時間はあるんですよ。どうしたものか……」
千穂さんに話を聞くと、もう夫には気持ちがないということでした。これ以前にも店の客と関係を持っており、今回が「仏の顔も三度」のタイミングだったとか。
ただ、夫は弁が立ち、相手を言いくるめるのがうまい。そこで、甥っ子と姉が遊びに来るタイミングで、夫に離婚について匂わせることにします。1対1よりも味方がいたほうがいい。
その夜、千穂さんから「山村さん、うまく離婚できそうです!」と連絡がありました。
「主人に離婚したいと伝えると、“何を言っているんだ! 金をよこせ、人生を返せ”と怒り出したんです。そして、以前に浮気をした2人の女性の名前と、彼女の苗字を言うと、顔が真っ青になりました」
そして姉が「ウチの店から犯罪者を出すわけにはいかない。警察にも相談済みだ」とハッタリをかまして、夫のサイン以外は記入済みの離婚届を出したそう。
「主人はお金に汚い。これまで店の売り上げから小遣い銭を抜いていたのを見て見ぬふりしていて、こっそり金額も押さえていました。それも踏まえたうえで“サインをすれば、財産分与分として、200万円を支払う”と伝えたら、離婚届けに署名をしてくれたんです」
記入済みの離婚届は、姉が持って帰り、提出を待つのみ。夫は1週間以内に家を出ると話がまとまったそうです。
「まだ届は出していませんが、離婚は確実です。そこで気が付いたのは、私は1人が好きだということ。主人に気を使いながら仕事をしたり、友達との登山や旅行を我慢していました。これから、また私の第三の人生が始まると思うとウキウキしています」
結婚生活は、日々の積み重ね。お金のことも恋愛関係もパートナーに隠していても、なんとなく悟られているもの。「黙っているから大丈夫だ」と、相手を侮ることは、心の距離を広げていくもの。
今回は、アルバイトとの浮気疑惑が引き金になりましたが、それまでの間に離婚原因は少しずつたまっていたのです。信頼回復には、裏切った時間と同じだけの歳月とエネルギーを要することが多いです。
相手に誠心誠意向き合えるか、そこには「自制心」も含まれると感じました。
探偵・山村佳子
夫婦カウンセラー、探偵。JADP認定メンタル心理アドバイザー、JADP認定夫婦カウンセラー。神奈川県出身。フェリス女学院大学卒業。大学在学中に、憧れの気持ちから探偵社でアルバイトを始め、調査のイロハを学ぶ。大学卒業後、10年間化粧品メーカーに勤務し、法人営業を担当。地元横浜での調査会社設立に向け、5年間の探偵修業ののち、2013年、リッツ横浜探偵社設立。依頼者様の心に寄り添うカウンセリングと、浮気調査での一歩踏み込んだ証拠撮影で、夫婦問題・恋愛トラブルの解決実績3,000件を突破。リッツ横浜探偵社 http://www.ritztantei.com/