「学歴が邪魔になることはない」母はお金をかけて大学に行かせてくれた
母親は祖父との折り合いが悪く、たまに祖母が様子を見に来てくれるだけで楓さんはずっと母親と2人暮らしだった。生活は決して裕福ではなかったが、そこまで貧乏だと思ったこともないという。
「母親が必死で働いてくれていましたから。たまに様子を見に来てくれる祖母からの援助も多少あったと思いますが。確かに好きなものを何でも気軽に買えるわけではなかったですが、食事を我慢することもなかった。
高校生のときにリンゴダイエットが流行って、私もずっとリンゴばかりを食べていた時期があるんですが、そのときに母は心配して、ヘルシーな総菜を作ってくれたりしていました。母は料理が上手なんです。一方の私は料理が全然ダメ。母子家庭って聞くとみんな子どもが料理を作っているイメージがあるみたいなんですが、母親はいつも手作りのご飯を用意してくれていました。私が作るスキがないほどに」
母親はずっと働き続け、楓さんを大学まで行かせてくれたという。
「私が高校生のときに祖父が亡くなって、そこから祖母との同居が始まりました。母は一人娘で祖父がお金をある程度残してくれていたみたいなのですが、それを私の大学資金に充ててくれました。
でも、お金が入ったから急に大学に行けと言われたわけではなく、ずっと昔から大学は行ったほうがいいからと言ってくれていたんです。『学歴が邪魔になることはない』ってずっと言っていました。その言葉は、私が大学に行くことで余計な負担をかけてしまうんじゃないかっていう思いを救ってくれましたね」
母親に対して感謝の言葉を多く口にする楓さんだったが、後半になるにつれて「母親のようになりたくなかった」という思いも強くなっていく。【~その2~に続きます】
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。