自宅で行われる勉強会
由加里さんの実家は裕福で、都内にオフィスビルを所有している。出会った当時、彼女の仕事はアートの輸出入だった。
「表参道のギャラリーに行ったら、イルカやクジラなどの海の生物を描いたリトグラフ、カラフルな街を描いたシルクスクリーンなど、当時はやっていたアートを取り扱っていました。当時、私もお勤めをしていたので、由加里から50万円で絵を買いました」
由加里さんから「この作家はアメリカ大統領とも親交があり、必ず値段が上がるから楽しみにしていてね」と言われた。
「離婚して、実家に戻った時に絵を見つけました。持っていても仕方がないので、アート売買の業者を読んだところ、5万円で買い取ってもらえました。30年近く持っていて、保存状態が悪いのに、きちんと値段がつくのはありがたかったです」
友達は“似た者同士”がなるというのが原則だと感じる。お嬢様で独身の由加里さん、庶民育ちで結婚と出産を経験した秀子さんの友情が、40年近く続いたのはなぜだろうか。同じアイドルが好きで、実家が近いとはいえ、接点があまりにも少ない。
「月に1回、由加里の実家で開かれる、いろんな勉強会に遊びに行っていたからです。そこに行くと、由加里のママお手製のおいしいランチとケーキがあり、4~5人の仲間たちとおしゃべりもできるんです。私があの苦しい結婚生活を乗り切れたのも、この会があったから」
勉強会で話していた内容は、精神世界、健康について、女性が輝くための秘訣などだった。会費は2000円だという。秀子さんは、この会に行くことを夫に反対されていた。
「私が結婚するまでは、土日のどちらかに開催していたのですが、私が結婚してからは主人が仕事の平日しか家を空けられない。由加里は私のために、開催を平日にしてくれたんです。それでも途中の10年間は主人の反対と子育てが忙しく、行けていませんでした」
娘が私立中学校に入った年に、由加里さんから連絡があり、再び参加するように。
「そしたら会の内容はパワーアップしていて、毎回のように、有名な開運メイクの先生とか、テレビに出ている女性の政治家が来ていたんです。ホントに由加里はすごいと思いました」
この10年間で、会の運営は洗練されていた。食事は仕出しになり、参加費も5000円になっていた。しかし、「私を待っていてくれた。歓迎してくれる」という感謝の念が強く、会に参加するのが楽しみになった。
しかし、以前のように“おしゃべりがメインの勉強会”ではなく、特定の目的を持った勉強会の色が強くなっていった。
「健康、開運、自然保護、神社の作法、古事記、磐座(神社のそばにある巨石)、宇宙とつながる方法などの話はスッと心に入っていきました。“人は幸せになるために生まれてきた”という話を聞いたから、主人と離婚ができた。離婚してからは、親の介護や仕事に忙しく、会に行けるのは年に3回程度。最近は投資の話ばかりで、足が遠のいています。たぶん、あれは詐欺。会に行かないことを責められるのが辛くて」
【イケメンのユーチューバーにハマっていく友人……その2に続きます】
取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)、『沼にはまる人々』(ポプラ社)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)などにも寄稿している。