半年前から以前の覇気を取り戻してきた
母がこの世を去ってから1年、悲観にくれる父を見かねて、長男が動き出したと言います。
「息子は私の別れた夫にそっくりなチャラ男ですが、優しい子で父のことを尊敬しているし、大好きなんです。“おじいちゃん、ばあちゃんよりいい女は世の中にいるって”と言い、マッチングアプリを教えたんです。最初、父は放置していたのですが、鳴りやまないので見るようになり、みるみるうちにハマっていったようなのです」
父の写真を見せていただくと、70歳という実年齢よりは若く、60代半ばに見えます。
「父はかつて、“島耕作”とあだ名されるほど、モテていました。姉3人の末っ子長男で、女性の扱いに慣れている。母は父が大量に持ち帰るバレンタインデーチョコレートやラブレターを“モテていいわね”と笑っていました。父はクールなふりをしていましたが、まんざらでもなかったのかな。私が知る限り、浮気したことはありませんけれど」
それから1年、アプリを介して知り合った女性と会うこともあったそう。長男が同伴したこともあったというので、祖父と孫の仲の良さもわかります。
「あるとき、父は“アプリは疲れた”とやめ、従来のゴルフだワイン会だと出かけるようになったのですが、半年前から様子がおかしい。書斎で誰かと真剣な様子で話していたり、息子の服を借りて出かけることもあります」
あるとき、娘(15歳)が、「友達とヌン活していたらおじいちゃんがいた」と隠し撮りした写真を送って来たといいます。その写真を見せていただくと、ロングヘアに明るいパープルのニットワンピースを着た20代の女性が、父にしなだれかかっている。
「息が止まるほど驚きました。そして、父の通帳を見るとこの半年で200万円も減っていたんです。振り込むのではなく、引き出して誰かに渡していることは明らかです。父が寝ている間にスマホを見ようとすると、それまでロックなどをかけていなかったのに、かけていたんです。息子に聞くと、“さあ? 知らないよ”と言う」
そんなとき、尚子さんは「パパ活詐欺」の報道を見て、私たちのところにかけ込んできたそう。
「お金も心配ですが、父の心が傷つくことが心配なんです。実は父、一度、特殊詐欺に引っかかっており、30万円を振り込んでしまったことがあるんです。“自分だけは絶対に大丈夫。私は海千山千のビジネスの荒波を航海してきたから”と言っていたのに、言葉巧みに振り込まされてしまった。母の死も重なっていたこともあり、自信を喪失。自死をしかけたこともあったんです。それもあって、息子は父にマッチングアプリをすすめました。父は仕事もなく、伴侶もなく、今は途方もないさみしさを抱えています。真実を知って、父をサポートしたいんです」
尚子さんは両親の愛情を受けて育っています。「母が亡き今、父に親孝行がしたいのです」とおっしゃり、調査をすることにしました。
【父の心に入り込んでいたのは、女性だけでなくそのほかの存在も……その2に続きます】
探偵・山村佳子
夫婦カウンセラー、探偵。JADP認定メンタル心理アドバイザー、JADP認定夫婦カウンセラー。神奈川県出身。フェリス女学院大学卒業。大学在学中に、憧れの気持ちから探偵社でアルバイトを始め、調査のイロハを学ぶ。大学卒業後、10年間化粧品メーカーに勤務し、法人営業を担当。地元横浜での調査会社設立に向け、5年間の探偵修業ののち、2013年、リッツ横浜探偵社設立。依頼者様の心に寄り添うカウンセリングと、浮気調査での一歩踏み込んだ証拠撮影で、夫婦問題・恋愛トラブルの解決実績3,000件を突破。リッツ横浜探偵社 http://www.ritztantei.com/