炊飯器が2つある理由は「もったいない」

義母も孫をかわいがってくれていたが、あの強い拒否を受けてから義母と菜々子さんの関係は微妙に。それでも定期的に家族で一人暮らしの義母の様子を見に行っていた。義実家はその頃から少しずつものが増えていった。

「印象に強く残っているのは、通販などで扱われていた健康器具です。振動して脂肪を燃焼するといわれているもので、手すりも付いていてサイズは半畳ほどの大きいものでした。義母にはまだまだ元気でいてほしいですから、健康器具の購入はいいことだと気にもしていませんでした。

しかし、その後もオイルカットしてくれるフライヤーや、炊飯器に精米機などの調理家電、歩き方を矯正してくれる靴や、スタイルが良く見える服など、少しずつものが増えていきました。お金が心配にはなりましたが、夫が何も言わないのに私が言うとまた義父の遺品整理のときのように拒否されてしまう気がして、何も言えませんでした」

そんな中で一番困ったのが義母の“捨てられない”性質だという。

「炊飯器は2つありましたし、他の調理家電などでキッチンの調理スペースは埋まっていました。他にも、まだ義父の服が入ったままのクローゼットや下駄箱からはものが溢れて、色んなもので義実家のスペースが埋まっていきました。

義母に使っていない古いほうの炊飯器について質問したら『もったいない。いつか使うかもしれないから』と。その言葉が理解できませんでした」

義母は出不精で服や靴はほぼ使用されないまま増えていくだけ。今の義母の趣味は通販番組を見ること。通販番組のお得意様になっているようでDMやハガキなどが頻繁に届いている。ものは今も増え続ける一方で、義母は「もし私が亡くなったら必要なものは持って行っていいから」と生前に片付ける気はまったくないという。

遺品整理で大変なのは量もそうだが、分別・仕分けには精神的な負担も生じる。歳を重ねるともったいないという気持ちが強くなる傾向がみられるという。生前整理ではそのものの思い出を一緒に語りながら整理することが効果的だが、息子の妻と義母という関係ではその解決策は難しいだろう。

取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。

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