深夜番組のアシスタントになっていた
奈津さんは地元の商業高校へ、美樹さんは東京の女子校に進学する。
「私は勉強ができたのですが、経済的に大学に行くのは無理でした。特に勉強したいこともありませんでしたしね。そこで、商業に行ったのです。私の学校は、商業ですが偏差値が高く、卒業までに簿記やワープロを叩きこんでくれる。手に職を付けたかったんです。美樹はおばあちゃんを頼って東京の女子校に進学し、やがて音信不通に。当時は家電話と手紙くらいしか連絡の取りようもなかったですし」
奈津さんは高校卒業後、準大手の自動車整備会社に就職。整備工の夫と23歳のときに結婚する。一方で美樹さんは華やかな人生を歩んだようだった。高校を中退して、モデルやタレントもどきの活動をして、テレビに出ているところを見た。
「あれは成人式の夜でした。美樹の姿を見かけなかった夜、テレビを付けたら深夜番組のアシスタントになっている姿を見たんです。下着みたいな衣装を着て、フリップを持っていました。あれだけ目立つ美人も、テレビを通すとそうでもなくなるんですね。何度かその番組には出ていたようです。当時、テレビに出るのは特別なことでしたから、街は大騒ぎでしたよ」
その時に、「おじさんにお尻を触られるのが嫌だ」と泣いていた小学生の美樹さんのことを思い出す。
「結局、男に甘えて生きているというか、それをしないと生きられないというか……小さい頃から“かわいいね”と言われて、お小遣いをもらっていた。そういうことってしみついちゃうんだろうな、と」
結婚後の奈津さんは仕事と子育てと家事に追われた。
「ウチの会社は安定していますが、給料は少なめ。今もその会社で夫と一緒に働いています。家も買ったし、息子2人も独立したし、自分でコツコツ働くのもいいものですよ。長男は鉄道の学校に行き、民間の鉄道会社で働いています。東京の社宅に住んでおり、2人の孫もいるんですよ。次男は私の卒業した商業高校を出てから専門学校に行き、SEになりました。横浜に住んでいますが、こっちは独身です」
【7年前に地元に戻って来た幼なじみが勧誘するビジネスと、夫への誘惑……その2に続きます】
取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)、『沼にはまる人々』(ポプラ社)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)などにも寄稿している。