事業をされている方は、個人、法人問わず1年間分の利益の計算と納税が必要で、いずれも確定申告をしなければいけません。ただし、個人と法人では課税される税金や計算期間、提出時期が異なるなど、少し違いがあるため注意が必要です。
そこで今回は、日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)の税理士 中川義敬が、長年にわたる税理士業務を通じて得た幅広い知識や経験に基づき、確定申告の期限や税金の種類について個人事業主と法人別にご紹介いたします。
個人事業主の確定申告
個人で商売をしている方、不動産を貸し付けている方など、事業を行なっている方には、確定申告に関して、それぞれ下記の特徴があります。
個人事業主が納める税金とは?
個人事業主が納める主な税金は、下記5つの税金でそれぞれ特徴があります。
・所得税
所得税は、自身で商売をして稼いだお金などにかかる税金です。1年分の収入から必要経費を差し引いた金額が所得と呼ばれ、この所得に一定の税率を乗ずることで税金を計算します。所得税の特徴として、所得が高ければ高いほど、適用される税率がそれに伴って高くなる仕組みになっていて、この税率の仕組みのことを累進税率といいます。
・住民税
住民税は教育、福祉、消防・救急、ゴミ処理といった行政サービスを受けるために、各地方自治体に収める税金で、「市町村民税」と「道府県民税」に区分されます。所得税の累進税率と違って、課税所得に一律10%が課税されることが特徴です。
・消費税
消費税は、商品・製品の販売やサービス提供をした場合に課税される税です。商品などの価格に上乗せされた消費税と地方消費税分は、最終的に消費者が負担し、納税義務者である事業者が納めます。確定申告で納税する金額についても、原則的に確定申告をしている方が負担しているのではなく、消費者から預かっているものを国に納税しているに過ぎません。
・事業税
事業税は個人の方が営む事業のうち、地方税法等で定められた事業(法定業種)に対して課税される税金です。法定業種は70の業種があるため、ほとんどの事業が該当することになります。原則的に、所得税の確定申告や住民税の申告をすれば、自動的に事業税の申告をしたことになるので、改めて書類の提出をする必要はありません。また、業種によって税率が異なりますが、所得に対して最大5%が課税されます。
・固定資産税(償却資産税)
固定資産税は、1月1日現在で土地や家屋及び償却資産を所有している方に、その固定資産の価格をもとに算定される税額。事業をしていない方でも課税されます。償却資産税は、償却資産を所有されている方で、毎年1月1日現在所有している償却資産の内容(取得年月、取得価額、耐用年数等)について、1月31日までに償却資産の所在する都道府県事務所への申告が必要です。
償却資産とは、土地及び家屋以外の資産で事業に使用しているもので、減価償却費が所得税法の規定による所得の計算上、必要な経費に算入できるものをいいます。よって、事業をしていない方には課税されません。
いつからいつまでの収入を申告する?
個人事業主が手続きをすべき確定申告は、毎年1月1日から12月31日までの収入に関して手続きを行います。
個人事業主の確定申告の期限はいつ?
確定申告の期限は、収入があった翌年の2月16日から3月15日までです。
上記の期限は消費税以外の期限であり、消費税を納税する必要がある方は3月31日までに手続きが必要です。
法人の確定申告
法人も個人事業主と同じく、1年間に発生した所得に対して確定申告が必要で、以下それぞれの特徴があります。
法人が納める税金とは?
・法人税
法人税は、企業活動によって得た所得に対して課税される税金です。法人の所得金額は、益金の額から損金の額を引いた金額となっています。益金の額とは、収入に近いイメージですが、企業活動により得た全ての収入などのこと。また、損金の額は、こちらも仕入れなどの売上原価や販売費、災害等による損失など、費用や損失に当たるものです。
法人税は、そうして得られた所得金額に税率をかけて税額控除額を差し引くことで算出します。
・地方法人税、法人住民税、法人事業税
法人住民税は、地域社会の費用について、個人だけでなく法人にも幅広く負担を求めるものです。道府県民税と市町村民税があり、事務所等を有する法人に、その事務所等が所在する都道府県及び市町村がそれぞれ課税します。
法人事業税は、法人が行う事業そのものに課税される税金のことをいいます。法人も個人と同じく、事業活動を行うに当たって地方団体の様々な行政サービスの提供を受けることから、これに必要な経費について、法人も分担すべきという考え方に基づき課税されるものです。事務所等を有する法人に、その事務所等が所在する都道府県が課税します。
また、資本金1億円超の法人に対しては、付加価値額に応じた付加価値割、資本金等の額に応じた資本割、所得に応じた所得割が課税されます。企業規模の大きな法人には、それだけ多くサービスを享受しているということで、中小企業に比べて納税負担も大きくなるのです。
その他、消費税と固定資産税についても、個人事業主と同じく納税する義務があります。
いつからいつまでの収入を申告する?
法人は1年間の期間を事業年度と称して、その事業年度に発生した収入を申告することになります。事業年度終了月のことを決算月と呼びまして、1年間をどこで区切るのかは、法人の希望に応じて任意に設定をする事が可能です。
法人の確定申告の期限はいつ?
法人の確定申告の期限は、原則としてその事業年度終了の日から2か月以内と決まっています。例えば、3月決算法人の場合には5月末までに申告と納税が必要です。また、特例として一定の手続きをすることで、提出期間を1か月延長することが認められています。
まとめ
商売をしている以上、儲けに対して税金が課税されることはやむを得ないことです。業種や規模によって、個人事業主として活動するのか、それとも法人を設立するのか、判断をしなければいけません。同時に、会計帳簿の整備や書類の保管など、事業活動の記録もしっかりと取る必要があります。どちらかと言うと法人の方がより厳密な経理の体制を求められて、税金の計算についても高度なものが求められるのです。
事業の規模が大きくなるとともに、会計に関することも煩雑になってきますので、納税についておろそかにならないように、早めに専門家にご相談することをおすすめいたします。
●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)
日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。
日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)
構成・編集/松田慶子(京都メディアライン ・https://kyotomedialine.com)