忙しく日々を過ごすなかで、いつの間にか夫婦の間に亀裂が生じ修復困難な状況になってしまっている場合、「離婚」を考え出すことでしょう。しかし、3万8000件以上の結婚、離婚、再婚相談を受け、数多くの夫婦問題を解決に導いてきた離婚カウンセラーの岡野あつこさんは、「離婚の8割はがんばれば修復できるケースだ」と言います。
そこで、岡野さんの著書『夫婦がベストパートナーに変わる77の魔法』から、崩れてしまった夫婦関係を修復し、よりよい関係を築いていけるようにするコツをご紹介します。
文/岡野あつこ
「既読スルーはご法度」「反応に一喜一憂しないこと」
夫婦は対面してさまざまなことを話し合うのがベストなのですが、忙しくて顔を合わせている時間がないということがあります。また、修復を考えている人のなかには、顔を合わせて話すとケンカになってしまうというケースもあるでしょう。そうした場合、唯一のコミュニケーションツールとなるのは、LINEなどのSNSです。
LINEは、スタンプなどを上手に使えば深刻な内容を緩和できる、スマイルマークで怒ってないよと伝えられる、相手が読んだかどうか確認できるなどの利点を活かせば、プレゼンの強い武器となるのです。
しかし、このLINE、うまく活用している人は思いのほか少ないのです。
相談者のKさんは、夫の両親との二世帯住宅に難色を示したのがきっかけで大ゲンカをして以来、夫が口をきいてくれなくなってしまったと悩んでいました。
夫との唯一の連絡ツールであるLINEを通じて夫の心を取り戻そうとするあまり、LINEに翻弄されているのが気になりました。
私がKさんと面会したのは一度だけで、そのあとはメールでの相談に切り替えましたが、Kさんから届くのは「夫に既読スルーされているのですが、どうしたらいいで しょうか?」「三日待っても返信がありません、怒らせてしまったのでしょうか?」 といったものばかり。
Kさんの事例は極端ですが、実は夫の既読スルーに不安を煽られる妻は珍しくありません。不安になるのは女性同士のLINEのやりとりを基準に考えているからです。基本的に女性同士のやりとりでは既読スルーはご法度。でも男性のなかには既読した時点で「わかった」と伝えた気になる人もいます。
忙しければ見ていないことや返事が後回しになることもありますし、妻からのLINEに何と返事をしたらいいのかわからないという夫もいます。
ケースバイケースなので一概にはいえませんが、夫の反応に意味はない、男性はこうなのだととらえたらいいと思います。
それより相手の反応に翻弄されているうちは、対等な立場に立っているとはいえないということのほうが問題です。
修復するためにはさまざまな壁を乗り越えていかなくてはいけません。その覚悟が必要。たとえ夫が意図的に既読スルーしていたとしても、淡々と伝えるべきことを伝え続けることが信念の表れとなって相手に伝わるのです。
そこでKさんにも「夫の反応に一喜一憂するのはやめましょう」と伝えました。相手の既読スルーに不安を煽られる人は、往々にして相手からLINEが来たらすぐに返信するのが誠意だと考えているのですが、これも、そんなことはありません。
修復問題を抱えている夫婦にかぎっては、一拍置いて返信するのが望ましいのです。相手からのLINEを熟読したうえで、言葉を選んで返信すべきだというのが一つ。もう一つは、あまり返信が早いと相手に「真剣に考えていないのではないだろうか」と誤解されてしまう怖れがあるからです。
こうしたことから私は、相手から修復に関する意見や提案があった場合には、まずはすぐに「読みました。少し考えてみます」と返信し、時間をおいて自分の考えを送るようアドバイスしています。LINEを巧みに使いこなし、関係修復のツールとして活用してください。
* * *
『夫婦がベストパートナーに変わる77の魔法』(岡野あつこ 著)
サンマーク出版
岡野あつこ(おかの・あつこ)
立命館大学産業社会学部卒業後、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科修了。自らの離婚経験をもとに、91年に離婚相談室を設立。以来、「 離婚しないに越したことはない!」をモットーに 、3万8000件 以上の結婚、離婚、再婚相談を受け、数多くの夫婦問題を解決に導く。夫婦問題研究家(R) 、パートナーシップアドバイザー 。カウンセラ ー育成にも力を注ぎ、「マリッジカウンセラー、夫婦問題カウンセラー養成講座」を開講。NPO法人日本家族問題相談連盟理事長。YouTube岡野あつこチャンネル更新中。