iDeCoのメリットの一つである、所得税・住民税の軽減の優遇を受けるには、税務署へ税務申告が必要となります。手続きをせずメリットを受け損ねるようなことがないように、気をつけなければなりません。
そこで今回は、iDeCoの確定申告が必要なケースや、申告の方法などについて詳しく見ていきましょう。100歳社会を笑顔で過ごすためのライフプラン、ライフブック(R)(https://www.smilelife-project.com/)を提唱する、ファイナンシャルプランナー・藤原未来がわかりやすく解説します。
目次
iDeCoに加入している人は確定申告が必要?
確定申告に必要な書類と書き方
確定申告を忘れてしまった場合
まとめ
iDeCoに加入している人は確定申告が必要?
iDeCoでは、確定申告が必要なケースと必要でないケースがあります。それぞれについて見ていきましょう。
【確定申告が必要なケース】
1.iDeCoの掛金を支払ったとき
確定申告の対象者は以下の通りとなります。
・個人事業主やフリーランスを含む自営業者
・無職の人
・会社員や公務員で「収入金額が2,000万円を超えており年末調整ができなかった」人
・会社員で「副業での所得合計金額が20万円を超える」人
・会社員や公務員で「小規模企業共済等掛金払込証明書が間に合わなかった」人
会社員や公務員でも年末調整ができないケースや、証明書類を提出できなかったケースも該当しますので注意が必要です。
2.給付金や一時金を受け取ったとき
源泉徴収されない退職所得がある場合や「老齢給付金」を「年金払い」で受け取った場合、確定申告が必要なケースがあります。
【確定申告が必要ではないケース】
1.iDeCoの掛金を支払ったとき
所得税の計算において、iDeCoの掛金は「所得控除」の対象となります。所得控除を受ける方法としては「年末調整での控除」と「確定申告での控除」の2つがあり、年末調整で所得控除を受けた場合は、確定申告が不要となります。つまり、給与所得がある会社員や公務員は「年末調整」をする場合、確定申告をする必要がありません。
iDeCoの掛金は「小規模企業共済等掛金控除」に該当します。そのため、掛金の「払込証明書」を勤め先の企業に提出しましょう。「小規模企業共済等掛金払込証明書」のはがきに記載された金額を、年末調整の書類の該当欄に記入すれば完了です。
2.運用益が生じたとき
掛金を運用した結果、運用益が生じるケースがあります。しかし、iDeCoの運用益については優遇措置として「全額非課税」となっていますので、確定申告は不要です。
3.給付金や一時金を受け取ったとき
給付金や一時金を受け取ったときの税法上の取り扱いは、受け取り方法によって異なります。しかし以下の場合には、確定申告は不要です。
・iDeCoの「老齢給付金」一時金で受け取る場合で源泉徴収されるとき
・「障害給付金」として受け取る場合(非課税)
・「死亡一時金」として受け取る場合(所得税ではなく相続税の対象)
確定申告に必要な書類と書き方
確定申告に必要な書類は対象者によって違います。ここでは、所得控除に必要な書類と確定申告書の書き方について説明します。
<会社員・公務員の場合>
・必要書類:「小規模企業共済等掛金払込証明書」と「確定申告書A」と「源泉徴収票」
確定申告書の書き方
・「確定申告書A」第一表への記入
左中部分にある「7小規模企業共済等掛金控除」の欄に、「小規模企業共済等掛金払込証明書」に記載された金額(一年間の掛金総額)を記入する。
・「確定申告書A」第二表への記入
右上部分にある「7小規模企業共済等掛金控除」で、「掛金の種類」の欄に「個人型確定拠出年金」と記入する。「支払掛金」の欄と「合計」の欄に、「小規模企業共済等掛金払込証明書」に記載された金額を記入する。
<自営業・無職の人の場合>
・必要書類:「小規模企業共済等掛金払込証明書」と「確定申告書B」
確定申告書の書き方
・「確定申告書B」第一表への記入
左下部分にある「13小規模企業共済等掛金控除」の右側の空欄に、「小規模企業共済等掛金払込証明書」に記載された金額(一年間の掛金総額)を記入する。
・「確定申告書B」第二表への記入
右上部分にある「13小規模企業共済等掛金控除」で、「掛金の種類」の欄に「個人型確定拠出年金」と記入する。
「支払掛金」の欄と「合計」の欄に、小規模企業共済等掛金払込証明書に記載された金額(一年間の掛金総額)を記入する。
申告期限内に、それぞれの必要書類を税務署に提出します。e-Taxを利用できる場合は、以下のメリットがあり便利ですので活用しましょう。
・ 24時間いつでも申告手続きができる
・税額が自動計算されるため、正確な確定申告書が作成できる
・書面での手続きよりも税務署の処理がスムーズに進むため、還付金の入金が早くなる
確定申告を忘れてしまった場合
iDeCo の確定申告を忘れてしまった場合や、iDeCoの金額を確定申告書に記入し忘れた場合の手続きについても見ておきましょう。
<所得控除を受けられる場合>
万が一、確定申告を忘れてしまったとしても、所得税が増えるわけではないので当然ペナルティはありません。しかし、掛金の申告を忘れた場合は、所得税を必要以上に納めていることになるので実にもったいないことになります。
もし、所得控除の手続きを忘れた場合には、「還付申告」を「iDeCoの掛金を支払った翌年の1月1日から5年間」の間に提出することで、還付を受けることができます。また、iDeCoの金額を確定申告書に記入し忘れた場合には、「更正の請求書」の提出が必要です。確定申告の更正の請求は、対象になる確定申告期限(3月15日)から5年間行うことができます。
ただし、確定申告書の提出後すぐにiDeCoの所得控除をしていないことに気付き、申告期限内に修正する場合、通常の確定申告書に訂正申告と記載します。これは、再提出を行う「訂正申告」となります。
<給付金や一時金の申告を忘れた場合>
iDeCoの給付金や一時金を受け取った際に確定申告が必要なとき、給付金を申告し忘れた場合にはペナルティが課されるので注意しなければなりません。所得税が増える修正を行う場合には「修正申告」を行うことになり、確定申告の期限後に修正申告をした場合、延滞税がかかります。
さらに申告を忘れていることを税務署から指摘されて修正した場合、本来納めるべき所得税との差額や延滞税の他に過少申告加算税がかかります。確定申告を忘れていることに気づいたときは、速やかに修正申告を行いましょう。
まとめ
今回はiDeCoの確定申告について見てきましたが、いかがだったでしょうか? 確定申告というと難しそうと感じる方も多いと思いますが、必要書類に金額を記入するだけで意外と簡単に書類を作成することが出来ます。自分で申告するのが不安な場合は、税務署に相談してみるとよいでしょう。
iDeCoは将来の資金作りだけでなく、正しく申告することで税制優遇のメリットを受けることが出来るので、上手に活用して老後の生活に備えましょう。生命保険や金融商品などを販売しない中立的なファイナンシャルプランナーは、相談者の立場に立って最適なリタイアメントプラン作りをお手伝いします。
●取材協力/藤原未来(ふじわらみき)
株式会社SMILELIFE project 代表取締役、1級ファイナンシャルプランニング技能士。2017年9月株式会社SMILELIFE projectを設立。100歳社会の到来を前提とした個人向けトータルライフプランニングサービス「LIFEBOOK®サービス」をスタート。米国モデルをベースとした最先端のFPノウハウとアドバイザートレーニングプログラムを用い、金融・保険商品を販売しないコンサルティングフィーに特化した独立フランチャイズアドバイザー制度を確立することにより、「日本人の新しい働き方、新しい生き方」をプロデュースすることを事業の目的とする。
問い合わせ先:03-6403-5390(株式会社SMILELIFE project)
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