事業が上手くいけばいくほど利益を残すことができますが、利益が残ることで税務調査のリスクも高くなると思われがちです。税務調査が入って、税務署にご自身の資金を根こそぎ持っていかれたという都市伝説もあります。しかし、税務調査が行われる確率はどの程度なのでしょうか。また万が一、税務調査により修正申告が必要となった場合、あるいは無申告が発覚した場合、一体どうなってしまうのかが気になるところだと思います。

そこで今回は、日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)の税理士 中川義敬が、長年にわたる税務調査のサポートを通じて得た幅広い知識や経験に基づき、税務調査が行われる確率や税務調査による影響についてご紹介したいと思います。

目次
税務調査が行われる確率や頻度とは?
税務調査の対象になる確率が高い法人とは?
税務調査の対象になる確率が高い個人事業主の特徴は?
税務調査で申告漏れがあった場合のペナルティーは?
まとめ

税務調査が行われる確率や頻度とは?

ここ数年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、税務調査の実施件数は減少傾向にあります。令和3年11月に国税庁が公表した「令和2事務年度法人税等の調査実績の概要」によると税務調査(実地調査)の接触率は2.9%でした。この割合は全法人のうち、税務調査が実施された法人に対する割合です。それほど高くはない確率であるかと思います。ちなみに、新型コロナウイルス感染症が拡大する以前の平成30年度での接触率は4.5%でした。

それでは、税務調査が行われる頻度はどの程度でしょうか。

法人を設立してから税務調査の経験が一切ない法人や、かれこれ10年以上税務調査がない法人も多くみられます。一方で、3年~5年に一度の頻度で税務調査が行われている法人もあるため、実際のところ明確な基準はありません。

税務調査の対象になる確率が高い法人とは?

「令和2事務年度法人税等の調査実績の概要」において、税務調査により不正が発見される割合が高い業種として、以下が公表されています。

・バー/クラブ
・外国料理
・美容
・医療保健
・生鮮魚介卸売

これらの業種については不正割合が高いといったデータが出ているため、いつ税務調査が実施されても不自然ではありません。

また、一般的には、規模が大きな法人や利益率の高い法人、過去の税務調査で不正が発覚した法人についても定期的に税務調査が実施されるといわれています。その他、決算書における「交際費」や「支払手数料」などの経費項目が同業種に比べ著しく高い法人についても、税務調査の可能性が高くなるでしょう。

国税庁の公表では、消費税還付申告法人に対し厳正な税務調査を行う取組があるようです。海外への輸出を主に行う法人は、事業の特殊性により多額の消費税還付を受けることができます。しかし、この仕組みを利用して不正に消費税の還付を企てる法人が多く見受けられます。よって、海外輸出業者については合法的に消費税還付申告を行ったとしても、税務署から目を付けられる可能性は高くなるでしょう。

税務調査の対象になる確率が高い個人事業主の特徴は?

一般的には個人事業主は、法人に比べ取引規模が小さくなります。そのため法人に比べて税務調査の確率は低くなるでしょう。個人事業主については税務調査のターゲットを絞っています。有価証券や不動産の大口所有者、経常的な所得が特に高額な個人、海外投資等を積極的に行っている個人など、「富裕層」に対して、重点的に税務調査が実施されています。

また、近年マーケットが拡大している仮想通貨により、所得を上げている個人事業主に対しても目を光らせていると考えられるでしょう。

国税庁は「令和2事務年度所得税及び消費税調査等の状況」により、個人事業主についても税務調査により不正が発見される割合が高い以下の業種を公表しています。

・プログラマー
・畜産農業(肉用牛)
・内科医
・キャバクラ
・太陽光発電

税務調査で申告漏れがあった場合のペナルティーは?

税務調査で申告漏れが見つかった場合、単なる集計や計算ミスなのか、意図的に所得を隠したのか、それぞれの基準に応じてペナルティーが加算されてしまいます。

ペナルティーの種類

申告漏れがあった場合、ペナルティーとして加算される税金の種類は下記の通りです。

・過少申告加算税
・無申告加算税
・重加算税

(1)過少申告加算税

税務調査により申告漏れや処理のミスが判明した場合に課税される税金であり、増差本税(本来の税額と、誤って納付した税額との差額)に対して10%課税されます。

※増差本税が期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える場合には、その超過額に対して15%課税されます。

(2)無申告加算税

そもそも申告をしていない場合には無申告加算税が課税されることとなり、増差本税に対して15%課税されます。

※増差本税が50万円を超える場合には、その超過額に対して20%課税されます。

(3)重加算税

過少申告が意図的で悪質であると認定される場合は、負担の重い重加算税が課税されることとなり、増差本税に対して35%(無申告の場合には40%)課税されます。

さらに、5年以内に無申告加算税または重加算税が課税されている悪質なケースであれば、各々の税率に10%加算されることとなります。

税率の軽減

税務調査の通知を受ける前に自主的に修正する場合は、過少申告加算税は課税されません。無申告の場合には増差本税に対して5%課税されます。そのため税務調査が入る前に自主的に修正することの重要性がわかるかと思います。

まとめ

税務調査には良い印象が持たれていないことが多いでしょう。しかし、税法に基づいた会計処理・税務申告を行っていれば、税務調査により指摘されることもありません。税務調査により影響が大きいケースは、意図的な過少申告が発覚し重加算税が課税されるケースです。

よって常日頃から適切に会計処理・税務申告を行うことで、ご自身のリスクを軽減することができます。会計処理や税務申告について不安に感じられる場合には税務の専門家である税理士にご相談されてはいかがでしょうか。 

構成・編集/松田慶子(京都メディアライン ・https://kyotomedialine.com

●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)

日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。

日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com

 

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