取材・文/沢木文
「女の友情はハムより薄い」などと言われている。恋愛すれば恋人を、結婚すれば夫を、出産すれば我が子を優先し、友人は二の次、三の次になることが多々あるからだろう。それに、結婚、出産、専業主婦、独身、キャリアなど環境によって価値観も変わる。ここでは、感覚がズレているのに、友人関係を維持しようとした人の話を紹介していく。
英恵さん(仮名・58歳)は、娘(20歳)との関係に悩みを抱えるようになり、友人の由貴子さん(60歳)に相談するようになる。由貴子さんから「母親失格」と言われたことで、心身の状態を崩しているという。
【これまでの経緯は前編で】
「過保護ではなく過干渉なのよ」
現在、英恵さんの娘は20歳。小学校から通った付属の女子大に進学せず、他校の入試を受けて不合格。1年目は浪人をしたものの合格には届かず、2浪目に入っているという。
「娘のことを5月に産んでしまったから、早くに20歳になってしまった。娘には申し訳ないと思っています。そもそも娘はおとなしく付属の大学に行っていれば、こんなことにはならなかったんですよ。ずっといい子でやって来たのに、何が気に食わなかったのか。こんな失敗作になるなんて、恥ずかしいです」
英恵さんは、様々なことに対する不安が強い。いったいどのように娘を育てていたのだろうか。
「将来困らないように、複数の習い事をさせました。大学受験にこまらないように、大学までエスカレーターで上がれる小学校にも入れました。受験も大変だったし、下から私立というのは想像以上にお金がかかる。それだけやってあげたのに、娘は裏切った。親の心子知らずです」
娘は「こんなはずではなかった」と暴れる。一般的に反抗期は13~15歳の間に起こるとされているが、娘は18歳ごろから、壁を殴ったり、親に向かって反抗的な言動を繰り返すようになったという。
「高校2年生くらいまではいい子だったのに、3年生あたりからおかしくなった。コロナのこともあるんですよ。卒業式もコロナでなくなってしまい、本当にかわいそうでした」
夫は、娘と英恵さんがやり合っても知らん顔をしているという。
「一度、娘に対して、付属の大学に進学しろと強く言ってもらったんですよ。私がどれだけ娘を愛しているか、夫の口からも伝えてもらいました。すると、“パパには失望した。パパだけは私のことを味方してくれると思ったのに”と泣かれてしまったことがショックのようで、お互いに無視をしているような状況が続いています。それよりも、娘にとって私が敵とみなされていることが悲しかった」
現在の状況は英恵さんにとって「家の恥」であるから誰にも相談できない。しかし不安は膨らんでいき、ママ友・由貴子さんに相談したのだ。
「てっきり、“あなたは本当に頑張っているのにね”と言ってくれるかと思ったのに、“あなたは過保護じゃなくて、過干渉なのよ”とバッサリですよ。これにはショックでした。由貴子さんの娘は、付属大学に進学し、楽しそうに青春を送っている。由貴子さんとも友達みたいで、母娘でバッグを共有したり、旅行に行ったりしている。私だってそんな関係になりたかった。だから娘にはたっぷりの愛情を注いだのに……」
【私の20年間は間違っていたのか……次のページに続きます】