子どものいない人生を一緒に楽しめることがただ幸せ
事実婚と法律婚のどちらかを選択するかはゆっくりと話し合っていくことに決まり、それよりも「両親に会ってほしい」と訴えられて、義両親と会うことに。しかし2年前の2020年の春は緊急事態宣言が発出されていた時期で、地方で暮らす義両親とは義妹の協力の元、ビデオ通話で対面することになる。
「つながるまで心臓がバクバクでした。画面越しってその場の雰囲気がわかりづらくて、さらに電話のように無言になってもいけないような空間で、逃げ場がない。私は顔が引きつっていて、首元から滝のような汗が出ていたんですが、それは画面だからこそバレないという利点もありましたけどね。
その場は結婚は置いといて、とりあえず親に紹介するという認識だったはずなのに、相手がいきなり『結婚したいと思っている』と言ってしまって! その場で私が否定するのもおかしいのでただ硬直していると、義両親と義妹からパチパチと拍手が聞こえてきました」
結婚することは認めてくれそうな雰囲気だったものの、それは希望さんの素性を明かす前。希望さんは、10歳上であること、バツイチであることをその場で伝えたという。
「そしたら、『聞いていますよ。おめでとう』と言ってまた拍手してくれたんです。夫は前もって私のことをちゃんと紹介してくれていたんです。
その後もしばらくお話をしていたんですが、泣くのを我慢することに集中していてあまり覚えていません」
その後、正式なプロポーズを受けて、緊急事態宣言明けに改めて挨拶に行き、2人は入籍。2人は今、子どものいる人生といない人生の2つのライフプランを一緒に考えているとのこと。
「まだ子どものことは完全に諦められてはいません。でも、『いなくても楽しめることを一緒にどんどんやっていこう』と言ってくれる夫と、1年間、5年間、10年間のテーマを決めて、それに沿った楽しいことを一緒に考えている最中です。それが、ただただ幸せです」
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昨今はバツイチに対しても親世代も寛容になってきつつある。しかし、年齢が大きく離れており、女性側が子どもが厳しくなる年齢に差し掛かっている場合は、親世代の意見はまだ二極化しているように感じる。少子化が進んでいることも事実だが、子どもを望んでいてもさまざまな状況から子どもを持たない人生を選択する人たちもいる。希望さんは現夫の言葉で子どもを持つことだけが幸せではないと気づくことができたが、女性だけでもその幸せに気づけるような世の中に早くなってほしいものだ。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。