誰にも文句を言われない、孫と二人きりの時間が楽しい
そんな間宮家で、ひとり気を吐いたのが仁さんだという。
さくらさんは出勤前に夕くんを保育園に連れて行くのだが、お迎えの時間には間に合わず、これまでは夫が迎えに行っていた。そこで、仁さんにお迎えを頼んでみたところ、当初こそ不安そうな顔をしたものの、2~3日目には楽しそうに迎えに行くようになったそうだ。
孫が「じいじ!」と走り寄ってくる姿がたまらなく愛おしいのであろう、と淳子さんは推測している。
「誰にも文句を言われない、孫と二人きりの時間が楽しいみたいですよ。毎日目尻を下げて歌を歌いながら帰ってきてましたから」
また、新型コロナウィルスがより身近な脅威になってからは、保育園通いをやめるよう娘を説得し、孫のお守りをするようになった。
自身の勤務先会社が早々に休業を決めたため、孫の世話に専念できたのだそうだ。
「責任感が芽生えたからでしょうか、恐怖心からでしょうか。以前とは打って変わって、主人は規則正しい生活になりました。食べ終わった食器を置きっぱなしにすることもなくなりましたし、除菌ウェットティッシュで家中拭くようになりました」
何より、元気がありあまっている2歳児に四六時中寄り添い、疲れる様子も見せずに甲斐甲斐しく世話する姿に、淳子さんは目を丸くする。娘のさくらさんも、「お父さんが家で子供を見ていてくれるから、仕事に集中ができる」と感謝しているそうだ。
「ようやく孫も『じいじ、じいじ』と懐いてきたので、ますます張り切っています。最近は大きなテレビで『機関車トーマス』のDVDを一緒にキャッキャ言いながら観ています。レゴブロックを部屋中にバラまかれても、ひとつひとつ拾い上げて、毎日除菌してからしまっています。私にはあそこまでできません。案外、無趣味な人で良かったのかも」
淳子さんの語り口が柔らかくなった。
「子はかすがい」とよく言うが、間宮家では「孫がかすがい」になっているようだ。
取材・文/大津恭子
出版社勤務を経て、フリーエディター&ライターに。健康・医療に関する記事をメインに、ライフスタイルに関する企画の編集・執筆を多く手がける。著書『オランダ式簡素で豊かな生活の極意』ほか。