サーバーという言葉は「モノやサービスを提供する」として、様々なところで使われています。美味しい飲み物を提供するサーバーでは、コーヒーサーバーやウォーターサーバーなどがあります。IT(インフォメーションテクノロジー)では、データ共有サービスや通信を中継するサーバーもあれば、巨大なスーパーコンピュータの計算サービスを提供するサーバーもあります。今回は、データセンターにあるサーバー群とそのサービスの役割をご説明しましょう。
目次
サーバーとは?
物理サーバーと仮想サーバーの違いは?
よく聞くサーバーの用途について
最後に
サーバーとは?
パソコンやスマホを使ってインターネットを使うとき、「サーバー」から様々なサービスを受けています。
サーバーの意味
サーバーは、パソコンと同じハードウエア構造ですが、数百台から数千台が何年も無停止で動くことを前提に、冷却強化や多重化、メモリーエラー対策、故障のときの通知機能など、一般のパソコンとは違う無停止連続稼働機能を持っています。
多種多様なソフトウエアにより様々なサービスが提供されるので、サービスとサーバーハードウエアを一体にしてサーバーと呼ぶ場合もあります。
小さなスマホで地図を参照したり、買い物やポイント決済が瞬時にできるのは、インターネットで接続された膨大なサーバー群がサービスを提供しているからです。
サーバーを使うメリット
サーバーを使うと情報共有ができます。図書館に行かなくても膨大な情報にアクセスできる時代になりました。
Webサーバーで提供されるブログなどは、印刷物と比べ、瞬時に大量に遠くへ情報を送ることが可能。メールサーバーは、全世界で同じ手順で電子メールを中継しています。
サーバーは個人や会社にも設置できます。Windows Server OSやストレージサービス専門のNAS(ネットワークアタッチドストレージ)などが一般的です。しかしながら、光回線の普及、4GLTEや5Gのスマホアクセスの高速化に加えて、多種多様なサービスが安価に提供されるようになってきたので、サーバーはデータセンターのサーバーを使う時代になってきました。
個人や会社のサーバーでも、インターネットに接続すると外部から攻撃されます。その対策工数は多く、運用人件費は高くなるので、サーバー運用は専門のインターネット事業者に任せたほうが安全で安価です。
クライアントとの違い
サーバーに接続するパソコンやスマホは、サーバーとセットで動作するのでサーバーに対してクライアントと呼ばれます。
Windowsでのブラウザ EdgeやChrome、MacでのブラウザSafariなどを使う時、パソコンはクライアントになります。EXCELなどを使う時にネットは必要ないので、パソコンはクライアントと呼びません。スマホは、常にデータセンターと接続して使うので、常にクライアントです。
Windowsであれば他のWindows機と接続して、HDD(ハードディスク)のデータ(ファイル)をLAN(ローカルネットワーク)を使い共有できます。この時、同じパソコンでも、データを提供する側をサーバー、提供されたデータを取りに行く側をクライアントと呼びます。
iPhoneでは、データサイズの大きな写真を、友人のiPhoneに直接送るAirDrop機能があります。この時、サーバークライアント区別はあいまいになり、接続して送る側がクライアントなのか、それとも受け手がサーバーなのかわからない通信サービスなどもあります。
物理サーバーと仮想サーバーの違いは?
増加するデータセンターでのサーバー調達コストや電気代を抑えるために、1台の物理サーバーに多重でOSをインストールする技術がサーバー仮想化です。クライアント側からは物理サーバーと仮想サーバーは区別できません。
物理サーバー
物理サーバーとは、昔ながらの1台1OSで使うサーバーのことです。IPアドレスも1台に1IPです。1ユーザーでサーバーを使うので、専用サーバーと呼んだりします。
インストールするアプリケーションにより、Webサービスやメールサーバー、ファイルサーバ、グループウエアサーバ、データベースサーバーなど、インストールするソフトウエアにより様々なサービスを提供します。
インテルなどの汎用サーバーCPU性能向上により、高価な専用ASICを使う高性能ルーターに匹敵する高速処理もできる時代になってきています。
仮想サーバー
仮想サーバーとは、1台の物理サーバーを複数のOSで使うサーバーのことです。IPアドレスは仮想サーバーごとに1IPです。
OSS(オープンソースソフトウェア)ではXen、有償ではVMWareなどを使い、1台の物理サーバーを4分割したりします。さらに多くの分割を行うコンテナ技術などもあります。
多数のWebサーバーを1IPで収納出来るサービスも、一種の仮想化で古くからレンタルサーバーサービスに使われ共用サーバーと呼びます。
たくさんのサーバーを設置してサービスするデータセンターでは、多量の電気を消費することが問題になっています。仮想サーバーの節電効果は大きくデータセンターにある巨大なサーバー群は、ほとんどが仮想化されています。
よく聞くサーバーの用途について
インターネットで使われる代表的なサービスサーバーをご紹介します。
Webサーバー
Webサーバーとは、インターネットを使い情報を共有するHTTPサービスを提供するサーバーのことです。HTTPサーバーとも呼ばれ、パソコンやスマホで使うブラウザへ情報を提供します。
代表的なサーバー構成は、LAMP(Linux、Apache、MySQL、PHP)と呼ばれるサーバー構成でApache HTTP Serverです。対抗するWindowsIISも多く使われてきました。
提供される情報はHyperTEXTと呼ばれ、HTML(HyperText Markup Language:ハイパーテキスト マークアップ ランゲージ)により記述されます。
HTMLを手軽に編集できるCMS(Contents Management System:コンテンツ・マネジメント・システム)であるWordPressを使うと、ワープロのようにHyperTEXTを作成し、Webサーバーでコンテンツ(データ)を公開できます。
メールサーバー
インターネット経由で電子メールを相手方に届けるには、メールサーバーで稼働するメール転送エージェント(MTA:Mail Transfer Agent)へ、SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)を使って電子メールを送ります。
メールサーバは大量の電子メール情報を扱うサーバーです。
クライアントでメール受信すると、メールサーバーに蓄積せず消去されるPOP3(Post Office Protocol version 3:ポップスリー)では、パソコンのHDD(ハードディスク)などが故障すると古いメールがなくなってしまうので、注意が必要です。
受信してもメールサーバーのメールを消去せずに受信するのが、IMAP4(Internet Message Access Protocol4:アイマップフォー)です。ただし、メールサーバーにメールがどんどん蓄積されるので、プロバイダやレンタルサーバー会社との契約容量を超えるとエラーとなり、新しいメールが受けられなくなるので注意しましょう。
ブラウザだけでメールクライアントサービスを提供するサービスもあります。GmailやYahoo!メールなどは、登録すれば無料でメールが使え、検索なども高速なので便利です。
ファイルサーバー
パソコンで作成したデータやインターネットからダウンロードしたデータ(ファイル)は、パソコンのHDDやSSD(ソリッドステートドライブ)に書き込まれます。このデータをパソコン以外にバックアップしたり、共有するサーバーがファイルサーバーです。
会社や個人でLAN(ローカルネットワーク)だけで使うならば、ファイルサーバー専用のNAS(Network Attached Storage:ネットワークアタッチドストレージやネットワーク対応HDDとも呼ばれるファイルサーバー専用機)が便利です。
データセンターに接続して使うクラウドサービス、Box(ボックス)、マイクロソフトOneDrive(ワンドライブ)などは、データ(ファイル)をインターネット経由で共有でき、インターネットに接続すれば使えるので便利です。
グループウエア
会社で各人のスケジュールを管理できるソフトウエアが、グループウエアです。所在を書く黒板のWeb版です。
かつては、LANに接続されたサーバーにインストールして使われましたが、最近はクラウドサービス化され、インターネット経由でスケジュールデータを簡単に共有できます。
最後に
日本で使われているサーバー台数はおおよそ1,000万台。ハイパークラウド事業者(AWSやAzure、GCP)などは急速にデータセンターを拡張し稼働サーバー数を増加させて、さらに快適なサーバーサービスを提供してきています。約4,000か所ある日本のデータセンターは、日本総電力の約3%まで消費するようになって来ており、さらに増加すると見込まれ、再生可能エネルギー対応なども進んでいます。
今後スマホなどが受けられるサーバーサービスは、これら巨大なサーバー群から提供され、さらに高機能化していくでしょう。
杉田正
インターネットハンドルはsugipooh。
アマチュア無線、TK-80BS、PC-8001、APPLEII、MacintoshPlusからのアップル信者。大型ストレージ、RAIDやNAS開発からWebサーバー開発、データセンターにおけるセキュリティ規格ISO27001(ISMS)を日本で最初に取得。現在はクラウド用省エネデータセンター研究開発や省エネデータセンター構築コンサルタントを行っている。
構成・編集/京都メディアライン(HP:https://kyotomedialine.com FB:https://www.facebook.com/kyotomedialine/)