「プロトコル」という言葉を聞いたことはあるでしょうか……? 

プロトコルとは、IPを使って文字を“正確に送る”、“映像を送る”、“Webブラウズする”、“コンピュータデータを送受信する”など、目的に合わせて作られたIPと一緒に使う通信手順のことです。世界中のコンピュータを繋ぐのを目的にしたインターネットは、それぞれIPアドレスを持って各種プロトコルを使い通信しています。

この記事では、「プロトコル」について解説していきます。

手を差し出して握るという“手順”を、双方が知っているから握手できる。

目次
そもそもプロトコルとは?
プロトコルの階層構造とは?
プロトコルの種類は?
最後に

そもそもプロトコルとは?

データを送るときにプロトコル=手順を決めないと送れません。

「紙に日本語の文字で手紙を書いて、郵便で送り届ける」なども郵便システムというプロトコルを使っています。しかし、届け先が日本語を読めないと手紙の内容は伝わりません。決めなければいけないプロトコルは種類がたくさんあるのです。

プロトコルの意味

大昔より、手紙を届けるプロトコルには、飛脚と呼ばれる人が運ぶシステムがありました。当然コストも高いので、一般人は使えませんでした。真偽を確認するための“朱印”などもあったようです。

手紙より短時間に情報を送る手段として“のろし”があります。送れる情報は事前に決めた内容=プロトコルの範囲になるので、“敵が来た”などというシンプルな知らせしか送れませんでした。

明治時代になり、電信、電話が実用化され、電信ではモールス信号、電話では電話番号と電話機の使い方が使うための手順=プロトコルになります。電話を掛けて“ツーツー”と鳴ると“通話中”だとわかるのは、電話を使うためのプロトコルを知っているからです。

電波を人類が使い始めたのは約120年前。イタリア人のマルコーニが無線電信を成功させ、陸上と船舶や、その後欧州から米国などの大陸間通信も実現されました。モールス信号に加えて送受信機が使う周波数やラジオ放送が使うAM、FMなどの変調方式も一種のプロトコルと言えます。

プロトコルの役割

インターネットで使われるプロトコルは、主にTCP/IP、HTTP、FTPなどがあり、世界的に合意されパソコン、スマートフォン(以下スマホ)、サーバーに実装されて使われています。1990年代は手紙システムを模倣したプロトコルを使っていました。イーサネットケーブル規格やWi-Fi規格、パソコン内部で使われているPCI Express規格もプロトコルと言えます。

TCP/IPソフトウエアは当時1本6万円もしました。Widows95がTCP/IPを実装して、OSを買うとTCP/IP通信が出来るようになり、一般の方々がインターネットを安価に使えるようになったのが、1995年のことです。

世界中のドキュメントを読みやすくするために「ハイパーテキスト」が開発されました(現在一般的に使われるPDFの祖先)。「ハイパーテキスト」をインターネット経由で参照するプロトコルHTTPとHTTPを使うブラウザが登場します。

NCSA Mosaicから始まりNetscape Navigater、Internet Explorerなどのパソコンで使うブラウザと、サーバー側もLAMP(Linux Apache MySQL Linux)サーバーによりWebサーバーを低コストで構築できるようになり、2000年頃には個人でも安価に世界中へ情報を発信出来る時代になりました。

プロトコルの階層構造とは?

LAN(ローカルエリアネットワーク)でのEthernetを拡張したIPだけで世界中が繋がることを実証したのは、東京大学とWIDEプロジェクトの研究者を中心にした研究チームであり、2004年に10Gbpsで接続実証してからです。それまでは、別のプロトコルにルーティングされて世界中でデータ交換されたため、通信コストが高かったのです。

このIPを使うプロトコルは、ISO(国際標準化機構)とITU(国際電気通信連合)により制定され、OSI(Open Systems Interconnection:開放型システム間相互接続)参照モデルと呼ばれます。上位第7層から第5層はブラウザやメールなどのソフトウエア、第4層から第2層はネットワーク、下位の第1層物理層はハードウエア領域の電線や電気信号を定義しています。

OSI参照モデルでは、“ポート番号”を使って通信プロトコルを区別します。インターネットを使ってデータを交換するにはIP番号だけでなく、TCPを使うのか、HTMLなのか、ポート番号は何番か、などをOSI階層モデルに区別しています。同じポート番号で適したプロトロルを使わないと、通信できないのです。

プロトコルの種類は?

主たる上位プロトコルはHTTP、POP3、SMTP、FTPで、それぞれに暗号化するTLSを含むHTTPS、SFTPなどたくさんあります。下位には電話線を使いデジタル通信するためのPPPや、ケーブルやコネクタなど物理層を規定するEthernet規格があります。

QUIC for HTTPS

ブラウザに表示させる内容を増やす(リッチにする)ときに問題になるのが“表示速度”です。これを改善するために開発されたのがHTTP/3プロトコルで、QUIC(クイック)という技術を使います。ハンドシェイク時間短縮やヘッダ圧縮、暗号化TLS1.3などでインターネット上のブラウズトラフィックの効率アップ、高速化、安全強化が行われています。

QUIC for HTTPSは、旧来のHTTP/1.1やHTTPSなどの上位互換で、使用するポート番号は8080番です。

ファイヤーウォールを使い外部から侵入されないために、ポート8080番しか通信出来ない場合が多くなってきましたが、QUICだと映像などもポート8080番だけでリッチなブラウズができます。

メール

1)POP3パソコンやスマホで使うメールアプリにおいて、メールサーバーに自分宛のメールを送ってもらうときは、POP3プロトコル(ポート番号110番)を使います。

POP3の場合、受信したメールはパソコンに保存され、メールサーバーから削除されます。パソコンのハードディスクなどが故障すると、受信したメールは参照できなくなります。

2)IMAP(アイマップ)

メールサーバーにメールを残しておくときは、IMAPプロトコル(ポート番号143番)を使います。Webだけで使えてメールが送受信できるサービスもあり、Google Gmailなどでは蓄積したメール検索も早くて便利です。

3)SMTP(エスエムティーピー)

メールを送信するときSMTPプロトコルはポート番号25番を使いますが、最近ではスパムメール対策でメールサーバーへの接続認証が必要な587番を使うほうが多くなっています。

SMTP

FTP(エフティーピー)

FTPとはファイルトランスファープロトコルのことで、Webサーバーなどにファイルを送るときなどに使います。ポートは20番と21番がセットで使われます。サーバー側から接続要求するアクティブモードとクライアント側(パソコンやスマホ)から接続要求するパッシブモードがあります。

Webだけでファイルをアップロード、ダウンロードできるファイルサービスも増えてきました。FTPクライアントを使わなくてもファイルを読み書き出来ます。OneDrive、BOX、GoogleDrive、Dropboxなどが有名です。これらはFTPにWebインターフェースを追加して使いやすくしていると言えます。

DHCP(ディーエイチシーピー)

DHCPとはダイナミック・ホスト・コンフィギュレーション・プロトコルのことで、NATルータなどで稼働するクライアントにIPアドレスを振るプロトコルです。1つのネットワークで1台のDHCPサーバーしか想定していないので、間違ってNATルータを追加接続するとネットワークが不安定になることがあります。

PPP(ピーピーピー)

PPPとはポイントツゥポイントプロトコルのことで、ダイヤルアップIP接続やADSLなどで使うプロトコルです。回線事業者から提供されるONUを使ってインターネット事業者に接続するときなどに使います。NATルータのWAN端子をONUに接続したとき、NATルータはPPPによりONU経由でインターネットに接続しています。

Ethernet(イーサネット)

EthernetはLAN(ローカルエリアネットワーク)で使う物理通信規格です。100Mbps、1Gbps、10Gbpsなどがあり、CAT5e、CAT6Aなどのケーブルやコネクタが規格化されています。通常ケーブル長100m以下であり、光ケーブルなどもあり、必要に応じて中継HUBを使います。最下位の物理層プロトコルと言えます。

ケーブルの代わりにイーサネットを無線で送るWi-Fiは、Wi-Fi6(IEEE802.11ax)やWi-Fi5(IEEE802.11ac)として規格化されています。

PCI Express(ピーシーアイエクスプレス)

PCI Expressとは主にパソコンの中で高速にデータを交換する規格のことで、ビデオカードインターフェースなどに使われます。2010年より長く使われたGen3(第3世代)から高速なGen4、Gen5の普及が始まっています。

最後に

日頃何気なく使っている、スマホやパソコン。その裏側では、「世界を繋ぐ」ことを目的にした膨大な労力で作られたプロトコルが活躍しています。世界中の情報が安価に入手できるだけでなく、SNS(ソーシャルネットワーク)などで手軽に発信出来るのも、インターネットを支える膨大な労力で支えるエンジニアのお陰です。

誰もが手軽に使えるため、そこを狙った悪い人たちもインターネットを使って攻撃してきます。そのような対策にも膨大な労力で対抗するエンジニアがいて、プロトコルも進化して対抗しています。

杉田正 
インターネットハンドルはsugipooh。アマチュア無線、TK-80BS、PC-8001、APPLEII、MacintoshPlusからのアップル信者。大型ストレージ、RAIDやNAS開発からWebサーバー開発、データセンターにおけるセキュリティ規格ISO27001(ISMS)を日本で最初に取得。現在はクラウド用省エネデータセンター研究開発や省エネデータセンター構築コンサルタントを行っている。

構成・編集/京都メディアライン(https://kyotomedialine.com  FB

 

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