生きていると、家族、夫婦、友人、仕事、勉強、健康面など、さまざまな問題が生じます。自分の努力次第でどうにかできることもあれば、そうではないことも。そんな中、ストレスを溜めすぎず、がんばりすぎず過ごしていくにはどうしたらよいのでしょうか? キャリア70年以上の精神科医・中村恒子先生の著書『心に折り合いをつけて うまいことやる習慣』から、恒子先生流の「人生をうまいことやる」コツをご紹介します。

文/中村恒子・奥田弘美

人と比べてもエネルギーの無駄。目の前のことに力を注ぐ

「比べる」というのは、いい面も悪い面もあるもんです。人と比べることで、負けないようにがんばろうと思えることもあります。一方で、比べることで人がうらやましくなったり、なんで自分ばっかりこんな不幸なんやと感じたりすることもあります。その点でいくと、最近は比べることは悪いほうに働いていることが多いのかもしれませんなあ。

外来で話を聞いていると、まわりの人と自分を比べて落ち込んだり、焦ったり、嫉妬をしたりして、苦しみを増やしている人がいます。そもそも比べてしまうのは、育った家庭環境、学校や仕事の環境、時代、いろんな要因があるもんです。

せやから、比べてしまうこと自体、ある程度は仕方ありません。料理屋さんにいって、他のテーブルの料理が気になるのと同じようなもんですな。目に入ってきて「あれおいしそうやなあ。ええなあ」と思うのは仕方ない。せやから「比べてはいけない」と考えるのではなく、「ついつい比べてしまうもんなんや」という前提の上で、「比べなくてええこと」を自分の中でしっかり線引きしておくことが重要やろね。

そもそもの話、どんなに恵まれているように見える人でも、どんなに優秀で活躍している人であっても、必ずその人なりの悩みや苦しみを抱えているもんですわ。「あの人はええなあ」と憧れる「あの人」と同じ状況に置かれたとしても、また種類の違う悩みや苦しみは出てきます。もしかしたら、「悩みのタネの総量」で言えば、今以上の苦しみや悩みになるかもしれません。

大きな会社の社長さんも患者さんとして診てきましたけど、会社がどれだけ儲かっていても、みんな心の中はしんどいんです。社員やその家族を養っていかないといけない重い責任があるのはもちろん、会社の売上、人の問題、誰にも相談できない孤独や不安をいっぱい抱えてはります。

他にも、いい子どもや旦那さんに恵まれてなんの不自由もなさそうなきれいなご婦人が、近所の奥さん連中に嫉妬されて仲間外れにされて不眠になってしまったり、お金持ちの家に嫁いでも嫁姑問題に悩んでうつになったりする。そんな人たちもたくさん診てきました。

一見たくさんのきらびやかなものや素敵なことに囲まれているように見える人でも……というより、そんな人ほど多くの責任や立場、人間関係にがんじがらめになって、傍から見るよりもはるかにしんどい思いをしていることも多いもんですわ。

つまりね、どこへ行ってもいっしょ。何になろうともいっしょなんです。どんな立場になったとしても、生きる上での苦しみや悩みはついて回ります。そのしんどさに上も下もありゃしません。

だからね、自分と人とを比べて落ち込んだり、うらやんだりしても意味がない。まったくムダなエネルギーですわ。「私もしんどくて大変やけど、あんたもきっとしんどいんやろうな。もしかしたら私よりもっと大変かもしれへんな」そんなふうに思うようにしてみてください。

それぞれいろいろ大変なんやけど、そう見えない人は、試行錯誤の中でなんとなく折り合いをつけている人なんやと思います。一見強そうに見えるけど、大変なときは大変なんです。ただ、試行錯誤していく中で、「なんでそんなに悩むんやろか?」「これはそんなに気にすることやろうか?」と、冷静になっていくんでしょうな。

「何か問題が起きるのは持って生まれたもんやからしゃあない」と腹を決めて、いちいち悩んでたらキリがない。「目の前のことだけやっていこ」と、思い悩むエネルギーを別のところに使っていけるようになるんです。職場や家庭の問題も、突き詰めるとそんなに大したことはありません。前向きに、気楽にですわ。

* * *

『心に折り合いをつけて うまいことやる習慣』 中村恒子・奥田弘美 著 
すばる舎

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中村恒子(なかむら・つねこ)
1929年生まれ。精神科医。1945年2月、終戦の2か月前に医師になるために広島県尾道市から1人で大阪へ。混乱の時代に精神科医となる。2人の子どもの子育てと並行しながら勤務医として働き、2017年7月(88歳)まで週6フルタイムで外来・病棟診察を続けていた。その後、2017年8月から週4のフルタイム勤務となる。「いつお迎えが来ても悔いなし」の心境にて生涯現役医師を続けている。

奥田弘美(おくだ・ひろみ)
1967年生まれ。精神科医・産業医(労働衛生コンサルタント)。日本マインドフルネス普及協会代表理事。内科医を経て、2000年に中村恒子に出会ったことをきっかけに精神科医に転科。現在は、精神科診療のほか都内20か所の企業の産業医として、ビジネスパーソンの心身のケアに従事。著書に『何をやっても痩せないのは脳の使い方を街がてていたから』(扶桑社)、『1分間どこでもマインドフルネス』(日本能率協会マインドフルセンター)、『心の毒がスーッと消える本』(講談社)など多数。

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