親にも子どもにも本当のことは一生伝えない
サイトに倫子さんが望む検索を入力して、ヒットした男性5人と面談したそう。コロナ禍もあり、全員リモートとなり、その中で個人情報をお互い明かさないという条件の人を倫子さんは選択する。
「色んな男性がいました。私の条件は、“30代”、“精子の状態”、“性病検査の有無”、“これまでの精子提供が0ではない”ことです。そのサイトには性病検査のデータをアップしている方は“有”と記載がありました。あと、今まで提供していない人はもしかしたらトラブルになるかもしれないと思い避けました。
面談をするときも家の中ですけどマスクをして、長い髪を縛って、背景をぼかしてと個人情報をできる限りわからなくしました。そのサイトでメールのやりとりができるので、お互いのアドレスも非公開です。私は一度も相手の方から年齢は聞かれませんでした。
相手によってはある程度の連絡を子どもができてからもしてほしいと言われる人もいたので、その場合はご縁がなかったと断りました。その一方で、私があまりに個人情報を明かさないので断られたこともあります」
実際に会ったのは2人。どちらも性行為ではなく、シリンジという医療器具を使っての提供に。どちらにも「他の人とやりとりをしていない」と嘘をついた。
「私は絶対に気持ちがない異性とは性行為はできないので、面談のときに医療器具を使った非接触の方法がいいと伝えています。医療器具は通販で簡単に買えました。
会うのは一瞬です。1人は駅で手渡し、もう1人は相手が指定するホテルに宿泊して交代で部屋に入って、そこで採取したものを置いといてもらうという感じ。子どもはこんな感じでも作ることができるんだと、言葉は悪いかもしれないけれど旦那さんっていらないんだなって思いました」
そして、倫子さんは現在妊娠中です。最後に、コロナ禍に入っていなかったとしてもこの選択を取っていたかを聞いてみました。
「わかりません。まだまだ夫探し、子どものお父さん探しにジタバタしていたかもしれません。でも、あの記事を見つけても勇気が持てなかったのに、コロナ禍に入ったことで背中を押されたような気がします。
親には過去に付き合っていた男性と伝えて、生まれてくる子どもにもそう伝えるつもりです。親は詳しく掘り下げてきませんでした。40歳手前の娘にとやかく言うことはないと思ってくれているようで。リモートになっているのでギリギリまで仕事は続けて、産休を取ろうと思っています。世の中、選択的シングルマザーを思ったほど拒否しないんだということが今回わかりました。『子どもがかわいそう』とか、とやかく言ってくる人は無視です。私と子どもの人生です。その人たちに何の関係もないですから。子どもを産める期間は有限です。あのとき行動した自分は間違っていないと思っています」
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。