嫁は切迫早産で入院、ベビー用品は準備不足
優子さんから送られてきたベビー用品リストを、光子さんはお嫁さんにその場で転送する。
「お嫁ちゃんと孫が不自由な思いをしていたら困ると思って、その場で転送したんです。というのも、お嫁ちゃんは切迫早産になってしまい、2か月間入院していたんです。だからベビー用品を揃える間もなく出産してしまった。息子は気が利かないから、せめて私がフォローしようと思って、送ったんです」
するとお嫁さんからは、喜びの言葉とともに、すぐに返信が来た。
「ベビーチェアと抱っこひもが欲しいとあり、優子に“どんなのがいいの”と聞いたら、“それならウチに使っていないのがあるから持って行くよ”という。お嫁ちゃんに”中古でもいい?”とLINEしたら“ありがたいです”と返信がきた。優子は“じゃあ、今夜持って行くね”と言ってくれた。その時は、友達っていいなと思いました」
その夜、ベビーチェアと抱っこひものほかに、大量のおもちゃやベビー服が届けられた。
「門の前で“こんなにたくさん、ありがとう”と御礼を言い、フンパツして購入した御礼の日本酒を優子に渡しました。そして、届けてくれたグッズを家に運び込んだんです。明るいところで見たら、それらのベビー用品は驚くほど使い古されていました」
抱っこひもはヨダレのシミが残っており、ベビーチェアは食べこぼしがこびりついていた。蝶番部分にはホコリが溜まっており、クッション部分はホコリと垢で黒ずんでいた。
「よくもまあ、こんなものを人にあげるな……というレベルなんです。ベビー服や食器も黄ばんでいたので、それらは捨てましたが、ベビーチェアは粗大ごみ。処分にもお金がかかります。仕方がないのでクッションを洗い、イス本体は主人と2人がかりで拭きあげてピカピカにしました」
そして、夫から「これはひどいな。光子は優子さんからバカにされているんじゃないか?」と言われた。
「その通りだと思いましたが、彼女の態度を見るとそうともいえないんですよね。根本的に常識が違うんだと思ったんです。いつからそうなったのか……上手に距離を置ければいいのですが、優子から“あれ、使ってる?”とLINEが頻繁に入るのもうっとうしい。優子はもともとパワーがあったのですが、3年前に孫が生まれてからは、それが強くなった。今までいろんなことがありながら、50年近くも続いていた友情も”終活”のときを迎えたのかな……と考えています」
取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などに寄稿している。