取材・文/沢木文

「女の友情はハムより薄い」などと言われている。恋愛すれば恋人を、結婚すれば夫を、出産すれば我が子を優先し、友人は二の次、三の次になることが多々あるからだろう。それに、結婚、出産、専業主婦、独身、キャリアなど環境によって価値観も変わる。ここでは、感覚がズレているのに、友人関係を維持しようとした人の話を紹介していく。

光子さん(63歳)は、先日、息子夫婦に子供が生まれ、「おばあちゃん」になった。このことで、年に1~2回程度会っていた友・優子さんとの関係がおかしくなってきているという。2人は中学時代の同級生として出会い、50年以上の友情が続いていた。

【これまでの経緯は前編で】

孫がいる“大先輩”のマウンティング

専業主婦の光子さんと、正社員としてキャリアを積み上げてた優子さんは、人付き合いのやり方も変わっていた。

「話していても、私はなかなか言葉が出てこないタイプなのですが、優子が先回りして“こういうことでしょ”とまとめてしまう。こっちはただ話したいだけなのにね。あとは、自分の意見が正しいという信念のようなものを持っており、それを掲げてぐいぐい来るのは知っていましたが、孫話になるとそれが強く現れてきたんです。なにせ、孫がいる“大先輩”ですからね」

発育や教育について何をすればいいか、どうすれば名門小学校に合格できるか、東京の公立小学校の事情や文科省のカリキュラムの問題点についてまで、優子さんは熱弁を繰り返した。

「結局は、自分の孫自慢なんですよ。言葉が早い、絵が上手、暗記能力が高いとかね。孫の写真を見せてほしいと言うので見せたら“ずいぶん髪が薄いけど、大丈夫?”ですからね。それは私も気にしており、産院のお医者さんにそれとなく聞いたら“そのうち生えそろいますから大丈夫ですよ”と言われたことでもあるんです」

また、光子さんのお嫁さんは働いている。そのことを話すと「母乳はあげているの? コロナだし免疫をつけなくてはいけないから、母乳は大切よね。ウチの娘は完全母乳で育てたの。だからウチの孫は肌も髪もぴかぴかでしょ?」と言われた。

「優子には悪意はないことはわかるんです。私のことも、私の孫についても、心から心配していることも見て取れる。だからこそ、私の常識がおかしいのではないかと思いました」

母乳で育てるかどうかの問題は、母親本人の体質や考え方、産院の方針などによって大きく異なる。正解はないのに、母乳神話のようなものは根強く残っている。それがミルク育児をしている母親を無意識に傷つけることもある。

「話を変えようと思って、“新米ばあばとしてどんなベビーグッズを買えばいいのかな?”と聞いたら、ベビー用品のリストをLINEで送って来てくれたんですよね」

そして優子さんは、「ウチの娘夫妻の収入はびっくりするくらい少ない。今の若い人って、私たちの時と比べて、収入が低いよね。だから、実家がある程度援助しないと育てられないから、いろいろ出しているの」と続けた。

「すぐ使わなくなるのだから中古で十分よ」と持ってきたモノ…次のページに続きます

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