「いい子」の裏には何かがある
里子さんの息子は「いい子過ぎる」。反抗期もなく、特に病気もせず、何かをねだるときは理由とセットだったという。いい子過ぎはしないだろうか。どのような家庭環境だったのだろうか。夫について聞いてみた。
「横柄で不機嫌な人。何がおもしろくないのか、いつも私にぷんぷんしていました。息子に対しても特に興味はないみたいで、二言目には仕事、仕事。朝早く仕事に行って、夜中に帰ってきて、土日はゴルフ。たまに家にいるときはゴロゴロして寝ている。それなのに音に敏感。あれは息子が4歳のとき、積み木で遊んでいて、それを倒す音がうるさいと、手を上げられたこともありました」
里子さんの夫は、銀行に勤務していた。高度経済成長期の銀行は、行員にプレッシャーをかけて業績を伸ばしていったという部分もあると推測する。その環境に納得できていればいいが、そうではない場合のストレスのはけ口は家族に向く。
「だから、息子が夜泣きすると“うるさい!”と怒鳴られていました。息子が泣き出すとおぶって外に出ていたんですよ。“頼むから泣き止んで”“大人しくして”と言いながら育てていたら、言う通りになってくれたんです」
母が追い込まれる窮状。そして声掛けに、言葉はわからないまでも答えていたのかもしれない。
「そんな息子に失望させられたのは、7年前に子連れ女性と結婚したこと。“なんでこんなのと?”と思うくらいの不美人な子で、当時8歳の男の子を連れていた。息子には“結婚しないの?”とは言っていたけれど、まさかこんな女性とはと、夫と絶句して反対したのですが、強引に入籍してしまった」
【嫁は自分の連れ子を息子に託し、貯金を持ち逃げして新しい恋人と家を出て行った……後編に続きます】
取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などに寄稿している。